「これぞ古き、良き?、アメリカ。」アメリカン・ギャングスター 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ古き、良き?、アメリカ。
1960年代末期から1970年代前半に掛けて、ニューヨークの麻薬ビジネスを仕切った一人の黒人マフィアに関する話。実話である。
デンゼル・ワシントンの”悪役”姿が珍しいです。”悪役”と言っても、大物ギャングなので、”やり手の実業家”と言う見た目ですが、人殺しも躊躇せず実行すると言う冷酷な一面も見せています。逆に、ああ言うことを実行できるから、裏世界でのし上がれるのだと思います。対する刑事役は、ラッセル・クロウ。こう言う物語の刑事にありがちな、家庭生活は崩壊している刑事です。賄賂や脅しにも怯まない、骨のある刑事を演じています。
この映画の背景には、ベトナム戦争と中国国共内戦が影を下ろしています。ベトナム戦争では、米軍兵士への麻薬汚染が問題になっているのですが、それが無ければ、デンゼル・ワシントン演じるフランク・ルーカスは、麻薬を入手できなかったでしょう。また麻薬は、中国国民党の残党がタイ・ビルマ・ラオスの奥地で経営している麻薬工場から入手して、米軍輸送機により米国内に持ち込むと言う大胆不敵な手口。これにはビックリです。ちなみに、この麻薬工場で、中国国民党は活動資金を賄っていました。
あと、もう一つ映画の背景にあるのが、警察の腐敗。ラッセル・クロウ演じるリッチー・ロバーツは、ニュージャージー州の刑事なのですが、対岸のニューヨークの麻薬捜査局の刑事たちは腐敗しきっていて、賄賂を取ったり、麻薬を横流ししたりと、悪行三昧。まぁ、ネタバレをしてしまうと、リッチーに逮捕された後、フランクはリッチーによる悪徳刑事逮捕に協力しています。もっと言うと、この事件の後、リッチーは刑事をやめ、弁護士に転進しているんですが、その第一号依頼者はフランクと言うオマケ付き。
157分と言う結構長い映画ですが、物語に飽きません。見応えのある映画です。良くも悪くも、麻薬ビジネスが世界規模で動かされていることが良く分かりました。