「パリは燃えているか。 空軍全面支援の映画で倫理観がガバガバなのはいいんすかね?」ナイト・オブ・ザ・スカイ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
パリは燃えているか。 空軍全面支援の映画で倫理観がガバガバなのはいいんすかね?
フランス空軍パイロットのマルチェロとセブが、テロの脅威に立ち向かう航空アクション映画。
各国で作られている『トップガン』(1986)パスティーシュだが、本作はそのフランス代表である。監督は『TAXi』(1998)で知られるジェラール・ピレス。パイロットのライセンスも持つ熱烈な飛行機オタクである。
フランス空軍(現在の航空宇宙軍。マジでSFみたいな世の中になってきたな…)完全協力の下制作されており、また監督の極力CGや模型撮影を用いたくないというスタンスから、飛行シーンの75%は実際に戦闘機を飛ばして撮影を行なっている。
セスナ機の運転は俳優自らに任せる、テロリストに鹵獲された戦闘機を爆破するシーンは旧式とはいえ本物を使用する等、このリアル志向はなかなかクレイジーな領域に到達しており、パリ上空に戦闘機を飛ばすという信じがたいアクションまで映画には登場する。
軍が協力しているからこそ実現した、本物の戦闘機が空を飛ぶ迫力。何も知らずに鑑賞すると特撮だと勘違いしてしまう様なゴージャスな映像が頻出するので、航空機マニアにとっては満足出来るのではないだろうか。
ただ、リアルな飛行に拘る代償としてドラマ部分は地味。空軍パイロットvsテロリストというド派手な設定だが、アニメ的な空中戦闘シーンはほとんど見られない。押井守作品を彷彿とさせる冒頭のクーデター未遂はなかなか緊張感があり、これは重厚な物語が期待出来るかも!と思ったがそんな事は無く、中盤はずっと特に何も起こらないダラダラした時間を見させられていた様な気がする。
中盤までの起伏のなさが一変。終盤はとにかく戦況が目まぐるしく変化する。…といえば聞こえが良いが、要は詰め込みすぎ。アメリカ軍とのレースが始まったかと思いきやアフリカでテロリストと戦い、その後パリのパレード中に一悶着が…、と次から次へと新しい展開が繰り広げられるのだが、そのいずれもが中途半端でおざなり。何が起こっているのか把握するのも一苦労である。お前らいつどうやってアフリカからパリまで帰還したんだよ!?
F16とのキャノンボールレースに、組織内部に潜むテロリスト。ひとつひとつの要素はとても面白そうなのに、脚本の杜撰さによって全てが台無し。フランス版ラジー賞である「Gérard du cinéma」で、最低映画賞にノミネートされてしまったのも宜なるかな。続編へのフリを残していたがそれが実現する事はおそらくないだろう🌀
ちなみに主人公を演じたブノワ・マジメルは、ミヒャエル・ハネケ監督作品『ピアニスト』(2001)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞した本物の演技派。
『ピアニスト』では美青年だったのに、随分と老けちゃったな〜…なんて思っていたら、公開はたった4年しか違わなかった。このイケおじ感は演技だったのね。流石というか、演技力の無駄遣いというか…。
「フランスではこういうジャンル映画に出ると軽く見られる。出演が決まった時は興味が持てなかった。演じたキャラクターは心理描写に欠けるが、自分の幼児的な部分が喜んでいたよ」と、納得しているんだがしていないんだかよくわからないインタビューが印象的でした。
余談だが、この映画はフランス軍が全面協力している割に、戦闘機が盗まれたり、他国の領空を平気で侵したり、女性パイロットがいきなりストリップを始めたりと、倫理観がゆるゆるである。
『アイアン・イーグル』(1986)という航空アクション映画は、戦闘機が盗まれるという展開がある為アメリカ空軍からの協力が得られなかったという事だが、その辺りに関してフランス軍は随分と緩いようです。おおらかなんだか適当なんだか💦
※さすがアムールの国フランス。他の戦闘機映画と比べて恋愛シーンが多い。そして女優さんがとにかく美人!
特に女性パイロットのキャス大尉を演じたアリス・タグリオーニはとんでもないブロンド美女である!彼女の艶姿は一見の価値あり!!