「人は生まれ変われるだろうか?」クリスマス・キャロル(1938) ねりまっくまさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人は生まれ変われるだろうか?

2023年12月7日
PCから投稿

単純

イギリス文学の古典(といっても19世紀の作品だが)を映画化した作品です。1938年の作品なので、今とは撮影技術が全く異なります。マーレイの幽霊が出てくるシーンなどは、安っぽい感じも否めません。それでも、最後まで見続けることができたのは、69分という作品の短さも一因でしょう。

ストーリーはシンプルです。強欲なスクルージがクリスマスの日に夢を見て、その夢をきっかけにして善人になって生きていく、そんな話です。作品中でスクルージが何歳の設定になっているかはわかりませんが、後期高齢者あたりでしょう。作品は善人になった彼を周りの人たちも受け入れてハッピーエンドで終わるのですが、私はそんなに単純には消化できませんでした。人格形成がすでに終わった人が、そこから価値観を180度転換させることはあり得るでしょうか?

暴力団員だった人が牧師になり、今は更生指導しているような話をきくことがあります。蓋を開けると、そういう役割を隠れ蓑にして、相変わらず悪いことをやっているケースも少なくないようです。数年前に、池袋で老人が運転する車が母娘をはねて死亡させる事件が起きました。人を死なせるという行為に直面しても、自分の非を認めない人もいるのです。

自分も80過ぎたらそうなるかも知れません。そこで変わることはそれまでの自分を否定する部分があると思いますが、年を重ねるとなかなかできなくなるものです。だから「老害」なんて言われるのでしょうけれど。まだ、価値観を修正できるうちに、自分の理想や倫理観を再確認するのに、少し役に立つ作品だと思います。

ねりまっくま