「面白くて三回見た」山猫 孫悟空さんの映画レビュー(感想・評価)
面白くて三回見た
クリックして本文を読む
素晴らしい傑作。私は三度見た。一度目は驚愕し二度目は惑溺し三度目は感心した。重厚な調度品に囲まれた貴族の館での祈り、このイタリア貴族の生活を美事に描く場面から本作は幕を開ける。真っ白なカーテンが風に揺れる軽やかで繊細な動きが重厚な貴族の室内に対称の妙を描く。画面は密度の濃い室内から開放的なテラスへと転じ、単色の荒野を貴族の馬車が走る場面へとさらに転調する。我々はヴィスコンィの計算されつくした映像の芸に早くも酔い始めることができる。
本作は時代の大きな転換期に老年を生きることになった誇り高い貴族、サリーナ公爵の極めて魅力的なこころの陰影を実に味わい深く描いている。公爵を演じるバート・ランカスターの眼光や表情に何と人間味あふれる圧倒的な迫力のあることか!主役サリーナ公爵のみならず、彼を取り巻く人間も面白い。クラウディオ・カルディナーレの宴の席での野卑かつ傍若無人な記憶に刻生まれる笑い声、アラン・ドロンの変わり身の早すぎる抜け目ない公爵の甥、新興ブルジョワ市長セダーラの滑稽さと抜け目なさ、閨でさえお臍を決して見せなかった公爵の妻などのわき役が本作をいっそう盛り上げる。
本作の終わりに延々と写されるダンスパーティ、とりわけ公爵とアンジェリカのワルツは本作のフィナーレにふさわしく我々を映画の快楽に誘ってくれる。
コメントする