「心に残る作品」コントロール(2004) Ana-phylaxisさんの映画レビュー(感想・評価)
心に残る作品
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描写が美しい。被害者の流した血の雫が、主人公の肩に落ちてくるシーンが忘れられない。
極悪非道を突っ走る主人公が、ふと無防備になった瞬間。なんだか自分もこんな経験をしたような気がする、そのくらい自然に落ちてくる表現。拭っても拭いきれない、罪悪感という染み。
アナグレスを飲み、別のIDを与えられ、生まれ変わった主人公。でも、罪を犯した記憶が消えたわけじゃない。
罪悪感から被害者に会いに行ったことにより、存在がばれ、過去が追いかけてくる。
人を本当にコントロールしているものは何か。彼が非行に走ったのも、母親を救えなかった罪悪感、無力感によるものではなかっただろうか。そして、それと向き合う勇気を与えたのは他でもなく、博士を初めとする周囲からの信頼と愛情だった。
もう一つこの映画でインパクトがあるのは、全てが偶然だということ。彼が凶悪な父親の元に生まれたことも、養護施設で誰にも守られなかったことも。それを運命としてタトゥーのように刻み込み、非情に生きることが自由意志のようにみえたとしても。偶然通りかかった無辜の人を傷つけたことや、その血が自分に落ちてきたことも、成り行き。
彼は理不尽な目にあって、理不尽を再生産してしまった。それに気がつくのが血のシーン。
人は自分でコントロールできない事象にコントロールされている。もし、何か一つでも違っていたら。彼が自分で自分が彼だったかも。
忘れたい記憶のある人に見て欲しい映画です。
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