復讐者に憐れみをのレビュー・感想・評価
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リュの境遇に同情せずにはいられない。
印象に残るシーンがとても多かった。 特にリュが恋人のヨンミと会うエレベーターの中でのシーン。名場面ではないでしょうか‼︎ 重い内容ですが、これぞ韓国映画が表現できる作品だと思います。
これが「恨の文化」というものなのか
〈映画のことば〉 復讐が復讐を呼び、更なる孤独を呼び込む。 私はこの映画で学んだ。 深すぎる愛は、返り血を浴びるのだ。 古田博司さんという方は歴史学者て、とくに韓民族の(政治)思想史に詳しい方のようですけれども。 同氏によれば、韓国は「恨」の文化の国柄で、朝鮮文化における恨は「伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望」と定義づけられているようです。 冒頭の「映画のことば」は、厳密には映画のことば(作品の脚本の中に現れるセリフ)ではなく、本作に寄せた阪本順治監督の作品紹介の言い回しになります。 しかし、本作のテーマを言い得て妙なので、映画のことばとして拾うこととしたものでした。 そのようなイメージどおりに、緑を基調とした全体の色使いの画面が独特だったと思いました。まず。評論子は。 画面から受ける印象は、まるで、現実から遊離したかのような不気味なな雰囲気すら醸し出していたように思います。 結局は「恨の文化」それ自体や「恨の文化(復讐という怨念)の無意味さ」を描いたと評論子は、受け止めました。本作を。 「人を呪わば穴二つ」とは、本作のような場合を指して言う言い回しではないかとも思いました。 本作の特典映像の解説によれば、本作は、別作品『オールド・ボーイ』の原点とされていることなどです。(ちなみに、同作は、ハリウッド・リメイクもされていると承知しています。) また、本作は別作品『別れる決心』、同『JSA』など、いわば極限状態に置かれた人々の心情の機微を描くことに長(た)けた、パク・チャヌク監督の手になる一本ということで、さらに上掲『オールド・ボーイ』や別作品『親切なクムジャさん』などと並んで、いわゆる「復讐三部作本として、高い世評を受けていると承知しています。 かてて加えて、本作は、約40億円の負債を抱えて倒産(民事再生法)するまで、『月はどっちに出ている』『フラガール』などの秀作を世に送り出し続けたシネカノンの配給作品であることにも、食指を動かされていた一本でしたけれども。 その期待にも違(たが)うことなく、深い姉弟愛を背景として、それ故の復讐者の思念を描き切った一本として、佳作の評価に値する一本だったと思います。 評価子は。 (追記) 本来、映画を観ることは楽しいことのはずなのですけれども。 何と言っても映画を観ることが好きで映画ファンをやっているわけですから。 本作のような作品を観ると、正直、心がズンと沈みます。 しかし、それだけ、本作が良い作品だったということでしょう。 それでも、映画ファンであって、映画ファンを続けていて良かったと思えるのは。 これからも、映画ファンでありたいとも思えた一本でした。 評論子には。
「恨」の表出としての復讐
パク・チャヌク映画の脚本力の高さには毎回驚かされる。登場人物たちの足場を少しずつ少しずつ切り崩していくような着実な追い詰め方。それゆえ登場人物たちの行動や言動には、そうせざるを得なかった、という苦渋と後悔と諦念に満ちた必然性がある。数多ある選択肢の中からたまたま一つをチョイスした、という感じがまったくしない。そういう意味では『ブラッド・シンプル』『ファーゴ』あたりのコーエン兄弟作品に近いかもしれない。振り返ったときにはもう戻れなくなっている。登場人物たちの緊張関係とその顛末は、もはや滑稽にすら思えるほど勘違いとすれ違いの連続で、それはあたかも現代社会のグロテスクな戯画であるかのようだ。 一直線に地獄へと続くこの連鎖から逃れる唯一の術は、各々が抱く復讐心をかなぐり捨てることだったが、それができれば苦労はしない。韓国はその被支配的な歴史経緯から「恨」の文化というものが強く根付いている。これは単に怨恨のみならず、憧憬や無常感をも含む感情的なしこりのことを指す。こうした「恨」の最もラディカルな表出が復讐だ。ゆえに復讐をやめろというのは、韓国人たちの歴史と実生活の両面に強く結びついた「恨」の文化を手放せと言っているようなものだ。しかし繰り返すようだが、そんなことは簡単にできない。日本がいつまでも忠臣蔵」の「恩義」的規範意識を脱することができないのと同じで、「恨」もまた韓国においてはきわめて強固で普遍的なナショナリズムなのだ。 ただ、本作のラストシーンでは、そうしたナショナリズムの行く末が、人間性の枯れ果てた不毛地帯であることが示される。本当にこれでよかったのか?というパク・チャヌクの疑念が、謎の男たちに思いがけず刺殺されたソン・ガンホの今際の際の表情に表れている。
予想を裏切られヒューマン要素にずっしりドーーンとくる映画
誰が悪いのか分からない 誰もが悪い気もする パク・チャヌク監督の復讐三部作の第一弾 バイオレンスさが際立つだろうと思って見たが予想を裏切られヒューマン要素にずっしりドーーンとくる映画でした。
聴覚障害の共有
聴覚障害の青年が、 愛する姉を救うために起こした行動が、 悲劇の始まりだった。 台詞が異常に少なく、 BGMもほとんど無いので、 見る人によっては難しい作品。 台詞が少ないのは、 「聴覚障害」という世界観を少しでも分かってもらう為かな。 復讐を重ねる両者は、殺人に関しては素人だが、 元々の得意分野を生かすところは説得力あり。 あちらの映画なので、バイオレンスは山盛り。 出血も大サービス。
『オールドボーイ』の衝撃がかすんでしまうほど重い。そして、帰りのエレベーターの中では思わずわき腹を押さえてしまった・・・
普段なら、DVDがまもなく発売されるので観ないところだったけど、ペ・ドゥナをスクリーンいっぱいに感じたいため観てまいりました。彼女はひとりっきりの革命家。こういう風変わりな役がピタリとはまるのです。しかも彼女のヌードもあるので、見逃すわけにはいきませんよね。しかしまぁ、いきなり臓器売買で腎臓を取られちゃいますので、最初から痛い、重い、悲しいと三拍子揃った凄まじい映画でした。 主人公リュウ(シン・ハギュン)は聴覚障害者。腎臓病を患う姉のために移植手術を嘱望するものの自分の腎臓では血液型が合わない。落ちこんでいた彼に追い打ちをかけるように溶接工場から解雇され、闇組織に自分の腎臓を売り金も騙し取られてしまう。皮肉なことに、直後にドナーが見つかり、姉の手術日が決まったのだ。しかし、騙し取られて金はない。そこでヨンミ(ペ・ドゥナ)の助言により金持ちの娘を誘拐することに・・・ この物語では、「皮肉なことに・・・」と思われるシチュエーションに何度も遭遇する。「手術費用を得たと思ったら、皮肉にも・・・」「誘拐した娘を返そうと思ったら、皮肉にも・・・」等々、運命のいたずらに翻弄される本当は優しい主人公が徐々に暴力性を帯びた復讐者へと変貌を遂げていくのです。そして、暴力の連鎖、因果応報といった避けられない命題によって、タイトルが示す「復讐者へ同情」することさえも虚しくも否定され、暴力への嫌悪感だけが残る・・・ 全体の構図としては、娘を誘拐された電気会社社長ドンジン(ソン・ガンホ)というもう一方の復讐者をも生み出し、感情線が入り乱れることになるのですが、労働者と資本家、障害者と健常者といった図も対照的に描いています。しかも、設定や小物の伏線に無駄が一切感じられないのです(あるとすれば、下ネタ過ぎるコミカルなシーン)。また、音響効果やカメラアングルに凝っていて、スクリーンの迫力に圧倒されっぱなしでした。 ラストには、「ヨンミの仲間のテロリストだ」と思わせる台詞がありましたけど、ぎこちないナイフの持ち方を見ると、とてもテロリストには見えません。多分、ドンジンに不当解雇された労働者たちなのだろうと妄想しています・・・
ドゥナドゥナ
復讐の連鎖をテーマにした作品。日本映画にはない暴力。映像の美しさはあまりないが、ストーリーは面白く一気に観れました。いい感じに痛々しくて、場面場面胃がキリキリするような緊張感が良かったです。 そして一番の見所は恋人役のドゥナちゃんの可愛さ。男子学生の憧れのようなさっぱりとしたボーイッシュな女性を演じて、本気で惚れてしまいました。 このドゥナちゃんを知れただけで見て良かった映画でした。リンダリンダリンダにも出ているとのことなので、今度見てみます。
素晴らしい
復讐の虚しさ、暴力性が描かれた素晴らしい作品。エンタメ性はないが、猟奇サスペンスやクリミナルサスペンスからエンタメ性をとって突き詰めるとこういう、絵になるのかと思った。映像作品として一見の価値あり。
誰にも等しく生きる権利がある。
不当解雇された男、ろうあの女、ろうあを偽りろうあ学校に通い手話を覚えた男。 日の光が当たる世界ではそんな人たちは半端者になるだろう。「大韓民国憲法第一条にまある人は等しく生きる権利がある」を実践している。 全編真っ暗なトーンで進み最後は疾走します。あっという間の出来事になります。 楽しい、面白いなんていう映画ではありません。 人が人である意味をとても考えさせられます。
復讐って虚しいよね。
2005年の映画だけれど、最近DVDで観た。なんだか凄惨な描写が多くてストーリーも救いの無い話で観ていて虚しくなる。画は面白いカットがあり、そういったところはこの監督のセンスは好きだけれど、スローな場面展開も多用すると鼻につく。あまりセリフで説明しなくて表情や動きで観客に解からせる手法で撮っているが、観るすべての人がついていけるものなのか。 大事なものをなくした人間が奪ったものへ復讐をする、それだけの話しで二人の演技は観るものを圧倒して画面に釘付けになるが、あちらの映画は刃物を使った生々しいアクション・シーンがどうも気持ち悪い。 特殊撮影をしているがリアルで怖いシーンが何度かある。 復讐三部作となっているが、監督が云っているのかマスコミが付けたのかどっちなんだろう。 二つ目の「オールド・ボーイ」三番目の「親切なクムジャさん」も観たけれど、それぞれ復讐という意味では通じている。 でも、やはり復讐を果たしたからっていってもそこからは何も生まれない。 自分の感情にケリを付けるだけで虚しさが募るだけだろう。 それが監督のコメントなのかも知れない。
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