ビハインド・ザ・サンのレビュー・感想・評価
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移民の姿を描いた『terra estrangeira』(1996)...
移民の姿を描いた『terra estrangeira』(1996)でその名を轟かせたウォルター・サレス監督。有名な作品といえば、『セントラル・ステーション』(1998)や『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)。
本作『ビハインド・ザ・サン』は2002年、『モーターサイクル・ダイアリーズ』の2年前の作品。アルバニア文学界の大御所イスマイル・カダレの小説『砕かれた四月』(アルバニアが舞台)に触発されたサレスが、舞台をブラジル北東部に移して映画化した作品。「血の掟」がテーマとなっている。
舞台は、ブラジル北東部ペルナンブーコ州の内陸部に広がるセルタォン(荒れ果てた乾燥地帯のこと)。一つの土地を巡って何世代にも渡って争い続けている二つの家。家族は「血の掟」に支配され、名誉だけのために命を掛けて不毛な復讐をお互い繰り返し続ける。そんな運命の中で葛藤する兄弟の姿を、荒涼とした映像美で描いています。
まさにメロ・ネットやグラシリアーノ・ハーモスが描いた風景。
しかしまぁ映像が見事に美しいです。
貧しい風景なのに。
映画の原題『Abril despedacado』=「砕かれた四月」。
次の満月、血の色が黄色に褪せるまで・・・とりあえず休戦だ。
次の満月、血の色が黄色に褪せるまで・・・とりあえず休戦だ。
暗い背景の中にはためく血に染まったシャツ、突然映し出される大写しの月、地から手が生えて出たような朽ちかかった木のブランコ、等々。これらの映像が突拍子もなく登場するが、映画に妙に合っていて溶けこんでいるのです。ブラジル映画なのに、どちらかというとヨーロッパ的な映像なのですが、荒涼とした大地である“魂の川”の乾ききった空気が漂ってくるほど臨場感がありました。しかも、かつては奴隷を使っていたが舞台である1910年には、自分たちで全ての農作業をやらねばならなくなったという没落ぶりがすごいです。
貧しさの映像化・・・特に死にそうな牛や収穫も少なそうなサトウキビ・・・これと銃で相手を殺すという残酷さがリアルに響いてくるのです。そして正反対に美しい青い空とブランコ。ブランコ映像は、もうちょっと時間が長ければ、酔ってしまいそうになるほど画面に引きずり込まれます。時間軸まで効果をプラスして空中を旋回するサーカスの少女クララは素晴らしかった!
あらすじを見た段階では『ロミオとジュリエット』のようなストーリーをモチーフにしてあるかと思いましたが、暴力・復讐の連鎖という国家間の戦争の縮図を表現したかのようなプロットに驚いてしまいました。復讐の繰り返しをしても結局は何も残らない。そんなメッセージをも感じ取れます。
映画館からの帰り道、雨にたたられました。映画とそっくりな展開だったので、傘も買わず、タクシーも使わず、気持ち良く濡れてきました・・・(バカ、冬なんだってば・・・)
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