殴られる男のレビュー・感想・評価
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ボギーは去り際までダンディだった・・・。
最近愛蔵版として再版された和田誠さんの名著、「お楽しみはこれからだ」を読んでいると、大好きな「傷だらけの栄光」(1956年、ロバート・ワイズ監督)のページが目に付いた。
そのセリフは、もちろんラストの
"somebody up there likes me !"
で、和田さんは
「誰か上の方で俺を好きなんだ」
と訳している。
また、和田さんは自分のボクシング映画ベスト4をここで発表しており、ロバート・ワイズから2本、マーク・ロブソンから2本選んでいる。
すなわち、
・罠(1949年)
・傷だらけの栄光
・チャンピオン(1949年)
そしてこの「殴られる男」(1956年)である。
ボクシング映画が好きな私は、うわぁ~いいなぁ~と唸った。自分ならそこにロバート・ロッセン監督の「body and soul」(1947年)を入れるかな~などと考えているうちに、大分スペースを使っている事に気付く。
この「殴られる男」は、ボギーの遺作で、確かに容姿は痛々しい。・・・が、彼の集大成と言える。
キャリア初期に多く演じた悪役的立場でありながら、次第にサム・スペードやリック・ブレインのようなダンディで仲間思い(弱者に優しい)な面が浮き彫りになってゆくのだ。
はじめは自分を捨てた社会への反抗のつもりで悪党の仲間入りするが、操られている事を知らないボクサーを護ろうという男気に、彼らの残酷な手口への嫌悪感に、さらには愛する妻の本心に突き動かされ、ついにラストで自分の取り分を全てボクサーに渡して帰国させ、この現実を世の中に告発しようと「殴られる男」のタイトルで小説を書き始める。
ボギーはスクリーンからの去り際までカッコよかったのだ。
昔からボクシング映画にはギャングが付き物であったが、本作はギャングの仲間となった男の視点で物語が展開し、八百長試合の仕組みを丁寧に描写している為、リアリティが群を抜いている。
また、元世界ヘビー級王者で、1933年作「世界拳闘王」(いい映画でした)に主演しているマックス・ベアの姿も見られ、監督の遊び心、細さが伺える。
最高に好きな映画だっ!
八百長?
新聞が廃刊になり、生活のために仕事を選べない。278パウンドの巨人だが、グラス・ジョーでボディも弱い。八百長も無茶苦茶で笑ってしまう。
タイトル戦直前の試合、ガスは可哀想だ。トロの強さをアピールできたけど、あれは演技じゃなかったんだなぁ。しかし、チャンピオン戦前に「全て八百長だった」と言っても信用しないトロ。「うそだろ・・・」と笑いたくなってしまったが、笑っちゃいけないんですよね・・・チャンピオン戦直前にクリンチとか教わってるし・・・それでもチャンピオン戦は戦う男を感じた。
実家の母親に家をプレゼントしたいと言ったトロに、自分の取り分である2万6千ドルを潔く渡すボギーがいいですね!やっぱ男だわ。
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