劇場公開日 1960年10月19日

「終盤に東京が核攻撃を受けます」第三次世界大戦 四十一時間の恐怖 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5終盤に東京が核攻撃を受けます

2025年5月10日
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鑑賞方法:VOD

第三次世界大戦 四十一時間の恐怖
1960年10月公開
第二東映、白黒作品

核戦争の恐怖を描く邦画としては
1961年10月公開の東宝カラー作品フランキー堺主演の「世界大戦争」が有名でこちらは全く無名です
特撮ファンとしては、「世界大戦争」と同様に核戦争で世界各国の都市が核攻撃で破壊されるシーンを期待しますが、第三次世界大戦の特撮シーンは終盤にごくわずかにある程度です
なので特撮ファンとしてどうしても観なくてはならない作品かというとさほどではありません

特撮は矢島信男です

一瞬に過ぎない国会議事堂の爆破シーンなどはまずまずですが、1年後に公開される東宝の「世界大戦争」の同じシーンには残念ながら遠く及びません
それでも、本作が「世界大戦争」に大きな影響を与えたのは間違いないものと思います

題名通り二日にも満たない僅かな時間で急速に第三次世界大戦に突入していく世界状勢がラジオのニュースなどで刻々と伝えられ、日常生活がいきなり浮き足立って混乱していく庶民の姿が描かれます
それがなんともリアルであり、ラジオが刻々と報じる国際状勢の内容がかなりリアルです
国民ははじめのうちはそれを不安げに聴くのみだったのが、次第に東京中がパニックとなり、人々は職場を放棄し始め、核攻撃を受けかねない東京から郊外へと避難を始めます、ついには防衛庁から緊急に東京から離れるように勧告藻出されます
混乱は混乱を呼んで次第に無秩序状態に陥っていく様子が描かれます
ラジオや新聞記者が言うシュチュレーションの設定もかなりリアルで見応えがあります
やがてラジオのモスクワ放送が日本の人民に最後の言葉を送りますと告げさよならといいます
今から12分40秒後に在日米軍基地を核ミサイル攻撃するというのです
在日米軍基地から核搭載爆撃機が発進している以上攻撃せざるを得ないということです
そして東京に核が投下され
東京タワーや国会議事堂が破壊され、キノコ雲が東京の方向に立ち上ります
丹沢山中と思しき避難民達にも死の灰が降り注ぎます
無線で東京に呼びかけても応答はありません
ICBM の陸上基地からも海中からも沢山のミサイルが次々に発射されます
モスクワもサンフランシスコも被爆し、東京はまたも焼け野原になっています

ラストはアルゼンチン放送局の生き残った人類に向けての放送でおわります
28億人の当時の世界人口のうち20億人以上を失って第三次世界大戦は終わりましたと、勝者は無く人類の敗北であると
と本作公開の4ヶ月前の6月は60年安保闘争が最高潮に達したデモ隊国会突入があったのです
劇中の新聞記者やモスクワ放送の内容は当時の左翼勢力の言説そのままです
ですから、当時の左翼運動勢力と連動したアジテーション映画だと、そう切り捨てるのは簡単です

それから65年も経ちました
冷戦は終わり、ソ連は崩壊しました
なのになんだか急速に時間が逆戻りしてこの時代のような核戦争への不安が増しています

今ならより冷静に本作の訴えるものを私達は受け止められるようになったのでしょうか?
いやSNS でより煽り立てられて冷静な判断力が失われてしまっているような気がします

あき240
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