「【“禁断の愛の軌跡。””もう二度と哀しい恋はしない”と彼は言ったのに、獄に入る私の為に全財産を投げ打ってくれた。激動する中国の経済状況を背景に青年実業家と素朴な学生との恋を描いた作品。】」ランユー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“禁断の愛の軌跡。””もう二度と哀しい恋はしない”と彼は言ったのに、獄に入る私の為に全財産を投げ打ってくれた。激動する中国の経済状況を背景に青年実業家と素朴な学生との恋を描いた作品。】
■1988年、民主化の波が押し寄せていた頃の北京。
政府幹部とのコネで順調に貿易会社を経営するバイセクシャルのプレイボーイ・ハントン(フー・ジュン)はある日、地方から出てきたばかりの苦学生・ランユー(リウ・イエ)を買いベッドを共にする。
数カ月後、夜の街で2人は偶然に再会し、禁断の恋に嵌って行く。
◆感想
・資料を見ると、今作のスタンリー・クワン監督は同性愛者である事をカミングアウトしている。
ー 彼の「ルージュ」を見た際に気付いてはいたのだが・・。-
・今作で、ハントンに同性愛を教えられたランユーの、最初はオドオドと、だが変わらぬハントンを想う姿が魅力である。
ー ここはサラッと書くが、私には高校の同級生で、私を思ってくれている男性が居る。
流石にそういう関係はないが、彼は実に優しく繊細な男である。
私が、同性愛者を描いた映画を観る遠因は彼にある事は間違いない。-
・今作では、近代中国で起きた”天安門事件”は映像としては一切描かれない。(中国は全否定しているし。)更に、建設業者であった政府幹部とのコネで順調に貿易会社を経営するハントンが、徐々に窮地に立って行く様は台詞のみで描かれる。
ー その場を映さなくとも(映せない・・。)、観る側に推測させる監督の手腕が素晴しい。-
■ハントンは、自身の身に危険が迫っている事を知り、ランユーを海外に留学させようとする。だが、ハントンが獄に繋がれた時に知らされたランユーが行った事実。
それは、且つてハントンの羽振りが良かった時に彼に買い与えた家を売ってランユーの”罪”を軽くしようとした事。そして、彼が与えた海外留学のお金も使った事。
<その後、ハントンはランユーと駐車場で会うが、彼の態度は冷静で・・。
だが、翌日ハントンの電話が鳴った際に告げられた事実。
そして、ハントンがランユーが働いていた経済成長著しい工事現場を車で独りで訪れるシーン。
今作は、近代中国ではタブーとされていた同性愛を抑制したトーンで描くと共に、スタンリー・クワン監督が観る側に起きた出来事を推測させる手腕が見事なる作品である。>