「べアールの表情が魅せるフランス映画の矜持」かげろう(2003) Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5べアールの表情が魅せるフランス映画の矜持

2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1940年ドイツの攻撃でパリから脱出した子連れの女教師の、感化院を脱走した少年との束の間の触れ合いを描いたフランス映画の佳編。ドイツ占領下の過酷な状況は「禁じられた遊び」「ルシアンの青春」などの作品と同じだが、これは時代背景より主人公の女性に焦点を当てた女性映画の純度が高い。それゆえ時代を超えた普遍性がある。年上の未亡人を演じるエマニュエル・べアールの揺れ動く女性心理が、丁寧で細かい表情変化で説得力を持ち、14歳の長男とカエル遊びに夢中の長女の設定が程よい絡みで、二人の関係を刹那的に描く。対して少年役のガスパール・ウリエルに、幼さゆえの危うさがもう少しあれば良かったのではないか。人間ドラマと云うより、べアール主演の女性映画としての価値は高い。

Gustav