「視線と時間の往来によって時代を超えたラブストーリーになった」」ラブストーリー かなさんの映画レビュー(感想・評価)
視線と時間の往来によって時代を超えたラブストーリーになった」
ジヘは母親不在の時、本の虫干しをしていて、母の昔のラブレターと日記の入っている箱を開けたところ、窓から風が吹き込みラブレターは飛び日記はパラパラとめくれていく。母の青春が解き放たれた。
演劇部の練習。ジヘはひそかに恋心を抱いている先輩サンミンがジヘの前に座っていてジヘは祈る。「振り向け、振り向け」と。その時サンミンガ後ろを振り返るとジヘはすぐに視線をそらす。ジヘと友人のスギョン、サンミンと美術館にいく。壁越しにジヘはサンミンに視線を送るがサンミンがジヘを見た瞬間、視線をそらす。
時代はさかのぼり若き母ジェヒが田舎にいる。そこでジュナという男性と出会った時からお互いの視線をそらさずまっすぐ二人は見つめあう。二人が別れるときジェヒはいつもジュナに愛おしい視線をおくる。ただ二人の前には壁があり、しのび逢が続く。他の人に気付けれないように一瞬視線を合わす二人を見れば、恋におちたことがわかる。ただ壁はあまりにも高く、ジュナはジェヒの前から姿を消す。消えたジュナを必死に見つけようとするジェヒの視線が哀しい。
雨が激しく降るキャンパスをジヘが屋根のある所まで走ってくる。それを見つめていたサンミンはジヘのもとに傘もささず走っていく。ある雨の日、それの理由を知ったジヘは傘もささずサンミンの傘を届ける。その時初めて二人は正対し視線は合致し、二人は恋におちる。
ラブストーリーというベタな題材を「視線の映画」としていることと、母のラブレターと日記が封印からとけたことで。母娘、父子の歴史を緻密に「時間の往来」することによって時代を超えたラブストーリーに仕上がっている。また時代を超えた代筆、ネックレスなどのディテールも見事な効果をはたしている。
娘が母の昔のラブレターや日記を読むという行為はどこか背徳的だ。ラブレターはすべて父からのものだが、ジュナが代筆したことを知ってもジヘは母に対する拒否感よりも肯定感がまさっている。母が男性二人から真剣に愛され、真正面から愛した人生を自分とシンクロさせるように。