世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃すのレビュー・感想・評価
全3件を表示
21世紀の私達にとっては、「市民ケーン」を観ても、どこがどう凄いのか、画期的であるのか分からなくなっているのと同じです 本作はSF映画における「市民ケーン」なのです
コアなSF映画ファンでもどれだけ本作を観ている人がいるだろうか? かく言う自分も初めて観ました このようなマイナーな作品が配信で手軽に観れる世の中になった幸せを感じます こんなことSFでも予言されていないことです 特撮はレイ・ハリーハウゼン 製作はチャールズ・H・シニア 監督の名前ではなく、この二人の名前にSF映画ファンならビビッとくるはずです 東宝特撮なら、特撮の円谷英二、製作は田中友幸とあるのと同じです このクレジットで観ない選択肢は有りません 公開は1956年 ゴジラ公開の2年後です ゴジラの米国公開は1956年ですから、米国では同じ年の公開作品なのです ゴジラの米国版「怪獣王ゴジラ」は同年4月の公開 本作は7月の公開だったのです つまり円谷英二とハリーハウゼンの対決だったのです ゴジラ自体、ハリーハウゼンの1953年の「原子怪獣現わる」から影響を受けた作品です ハリーハウゼンが観ればすぐ分かったはずです ゴジラへのハリーハウゼンの回答は1955年の「水爆と深海の怪物」になります 巨大タコがサンフランシスコを襲撃する映画です さて本作を観て驚くSF映画ファンは多いと思います のけぞるような映像が目白押しです 空飛ぶ円盤はなぜ回転するものなのか? それは本作の円盤が回転しているからです 「謎の円盤UFO」が回転していたのも本作が由来なのです 「宇宙家族ロビンソン」のジュピター2号のエンジンが回転するのも本作が由来なのです どんなSF映画でも円盤の飛行音があの特徴的な音なのも、本作が由来なのです 序盤で主人公の運転する車を、道路上の低空で追跡するシーンは、まるで「未知との遭遇」です 空飛ぶ円盤は世界各国の大都市に数機編隊で出現し、首都ワシントンにも登場し怪光線を発します まるで「インデペンデンス・デイ」なのです! 地球側の対円盤兵器である超音波銃の形状はどうだ! これはメーサー砲ではないか! 特徴的なパラボラは本作が由来だったのです そしてそれにやられて墜落する円盤が、連邦議会議事堂にぶつかりめり込んでしまうのです! 空飛ぶ円盤内部は、天井の高い何もない大空間 ガメラに登場する宇宙船もそうなのです! 脳をハッキングされてしまった将軍(字幕の元帥は誤り)も、その後のSF映画には山のようにでてきます 1959年の東宝特撮の「宇宙大戦争」の科学者もそうです というかその作品は本作からインスパイアされた作品に違い有りません! 序盤に登場するロケット発射管制室の映像にも興奮します 壁一面に点滅するインジケーターが沢山ある計器板 そこには3つのモニターがあり、発射機上のロケットが映っています それがどうした? 1956年ですよ! 21世紀の私達にとっては、「市民ケーン」を観ても、どこがどう凄いのか、画期的であるのか分からなくなっているのと同じことなのです つまり本作はSF映画における「市民ケーン」なのです この計器板のイメージが、60年代のSF映画やテレビシリーズに大きな影響をあたえたのです 原潜シービュー号、タイムトンネルはもちろんそうです 科特隊基地やウルトラ警備隊の指令室、SHADOW司令部もそうです このモニターに写されている映像が大変にクリアで動いています はめ込み合成です 2001年宇宙の旅での映像は既にここで実現されているのです 円谷英二はきっと目を見張ったことでしょう 一体どうしたらこのような特撮ができるのかと 彼が受けた衝撃の大きさを感じます ハリーハウゼンと円谷英二は、このあと10年以上、お互いの作品に刺激を受けあい、自分が撮った新しい特撮作品を使って太平洋を挟んで会話をして行くのです これでどうだ! おお、それならこうだ! それが本作から始まっていたのです! ハリーハウゼンは1920年6月29日生まれ 円谷英二は1901年7月7日生まれ 19歳も円谷英二が先輩なのでした こうして1958年12月、円谷英二は「地球防衛軍」を公開します 観ればすぐわかります これが本作に対する円谷英二からの回答であると ハリーハウンゼンのアイデアを元に膨らました作品です ハリーハウンゼンも、一目で自分の作品を元ネタにしたものだと分かったはずです 盗作だとか、ロイヤリティがとうだとか 彼の頭にはちっとも無かったのです 太平洋の向こう側に同じことをやっている奴がいる! それだけで嬉しかったに違い有りません 俺の仕事を評価して、それを発展した形で返事を返して来た! その感激が上回ったのだと思います 1958年12月 彼は「シンドバッド七回目の航海」を公開します ほぼ日米同時公開でした つまり日本で「地球防衛軍」と「シンドバッド七回目の航海」は激突したのです!
あ
構図がとにかく酷い。監督は映画を観たことがないのか。 記録映像のシーンがどれだけ構図が良いことか。せめてそれを真似すればよかろうに。 この時代にしては酷すぎる。ヒッチコックのスクリーンプロセスを観ろ。 低予算で出来が悪いのは仕方ないが、こんな酷い作品を古典的で素晴らしいと評価する現代人の気が知れない。
予算がなくとも知恵がある
ティム・バートンの「マーズ・アタック」にもオマージュされた円盤襲来物の古典SF。
主役の円盤の飛翔原理は磁場での重力制御とアインシュタインが聞いたら怒るような設定、「宇宙戦争」の三角型と違ったアダムスキータイプのまさに円盤。宇宙人は木彫人形の老人風、武器は主に怪光線、円盤はバリアで守られているが着ている鎧は銃には無力、大気に触れるとなぜか溶けてなくなる(そもそも移住は無理じゃん?)。
特撮は『原子怪獣現わる』のレドザウルスを造ったレイ・ハリーハウゼンのストップアニメーション技術、首都の攻撃シーンも大規模なミニチュアセットを作る予算が無く、撃墜される爆撃機や軍艦は第2次大戦の資料フィルムを流用するなどでしのいでいる。
登場人物は東宝特撮でもお約束になった天才科学者と美女カップルに軍や科学の重鎮の面々プラス尊い犠牲者。
主人公マーヴィン博士は人工衛星を打ち上げるセンター長ということから宇宙人に目をつけられ地球のリーダーとの会談をセットするよう脅迫される、猶予期間は60日、円盤での威嚇攻撃かと思いきや太陽フレアーを起こされインフラは壊滅?かと思いきや博士は新兵器を開発して、少なくともワシントンDC界隈の円盤は撃墜(他国も設計図から作れたのでしょう、予算都合で中継カット)、めでたしめでたしで妻と遅いハネムーンを楽しむのでした、というプロット。コンピューターらしきマシンは歯車だらけ、ポータブルのテープレコダーが重要な役割、当時としては最先端機器だったと思うと時代を感じますね。円盤の音はロケ地の下水処理場のタンクの音を加工したそうな、SFはまだまだ亜流、予算も制限され、知恵と工夫で取り組んでいた先人たちには頭が下がります。
全3件を表示