殺人者(1946)のレビュー・感想・評価
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“殺し屋”に殺された青年が持っていた保険証を手掛かりにフラッシュバック方式を用いてある犯罪の全容を解き明かすまでを描く1940~1950年代の典型的なフィルム・ノアール。話の巧みな語り口に感心した。
①先ずは冒頭のダイナーでのスリリングなシーン、観客をドキドキさせる演出がなかなか上手い。ロバート・シオドマクの演出は『らせん階段』ほどニューロティックではないけれど錯綜した話を上手捌いて達者なところを見せ、それでアカデミー賞監督賞にノミネートされたのだろう。②その後バート・ランカスターが呆気なく殺されてしまうのも驚いたが、先入観でバート・ランカスターが主役だと思っていたら、話が進むにつれそうではなく事件を調べる保険調査員のレアドンが主役だとわかる。かれが探偵の役割を演じるフィルム・ノワール(犯罪映画)なのだということも。③ニュー・ジャージーの片田舎の町に流れてきた一人の青年。偽名を使いガソリンスタンドで働いていたが、ある日やって来た殺し屋たちに逃走もせず抵抗もせず殺される。彼が持っていた保険証の受取人がアトランティック・シティの安ホテルの中年の客室メイドだったことから興味を持った保険調査員が、青年の正体は誰だったのか、何故殺されねばならなかったのか、少ない手掛かりを手繰っていく中で辿り着いた各関係者の記憶(フラッシュバックで描かれていく)を繋ぎ合わせていってある犯罪と青年がその犯罪に絡んでいた真相に辿り着く。ゆっくりと然しだらだらとではなく事件の真相に近づいて行くところは如何にもハードボイルド映画的で心地よい。④エヴァ・ガードナーはこの映画で初めて“凄い美人”が出てきたとハリウッドで注目されたが、役柄はフィルム・ノワールの典型的なファム・ファタールの域を出ず演技もまだ硬い。ハリウッドの枠に納まらず、ケニア、スペイン、イタリア、パリ、インド等を舞台に映画史に残る Love Goddess としてその美貌と魅力とが開花するにはもう数年待たねばならない。⑤ノンクレジットでジョン・ヒューストンが脚色に参加していたとのこと。成る程。
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