「【”犬を食べる文化”と”犬を飼うことにステイタス感を覚える文化”が共存する”国”で生きる人々の姿をシニカルな視線で描き出したブラックユーモア作品。】」ほえる犬は噛まない NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”犬を食べる文化”と”犬を飼うことにステイタス感を覚える文化”が共存する”国”で生きる人々の姿をシニカルな視線で描き出したブラックユーモア作品。】
ー安普請のマンションで気の強い妻と暮らすヨンジュ(イ・ソンジェ)は大学教授を目指しているが、気真面目過ぎて、学長に賄賂を贈ることが出来ず、そのポストを手中に出来ない。
妻からも軽んじられ(妊娠した妻から渡されたクルミを健気に割って食べさせている・・)鬱屈した気持ちが溜まっていく・・。
そんな中、朝から煩く吠える犬の声が気になって・・。-
・ユンジュがマンションの地下の箪笥に”隠しておいた”犬を”嬉々として”犬鍋にして食べるマンション管理人の姿。
ー犬食は、最近では下火になっているらしいが”ある階層の人々”にとっては御馳走らしい・・。赤犬が特に美味いそうだ・・。食べると体が火照り、滋養強壮には抜群であるそうである・・。
(且つて、彼の国の人達から私が、マッコリを飲み過ぎた翌朝に聞いた話である。)-
・愛犬が居なくなったと、マンションの管理事務所で働くヒュンナム(ペ・ドゥナ:すっぴんに見える・・)に届ける老婦人。何とか犬を見つけようとするヒョンナム。
■交わるはずのない、”黄色いカッパ”を着たヨンジュと”赤いフード”を被ったヒュンナムのマンション内での追いかけっこ。
巡り巡って、妻が退職金で買った犬スンシャを逃がしてしまい、黄色いカッパを着て、街中に”訪ね犬”のチラシを浮かない顔で張る、”黄色いカッパ”を着たヒョンナム。
ー随所に、ポン・ジュノのセンスがさり気なく描かれる。-
<何だ感だとありながら、
漸く教授のポストを手に入れたヒョンナムが、”暗幕を下ろして”学生たちにビデオを見せる講義の際の、虚ろな表情・・
”何だ、こんな事のために学長に賄賂を渡し、酒に酔ってナムグンは事故で命を失ったのか・・、もしかしたら自分も・・。”
と、管理事務所を馘首されたヨンジュが太っちょの友人と楽しそうにピクニックをする”光差し込む”風景の対比も印象的である。
韓国現代文化への皮肉も少し伺える作品。
”フランダースの犬”のあの曲が、何ともブラックに聞こえた作品でもある。>
■蛇足
ポン・ジュノの名が全世界に知れ渡った最新作の根底に流れる思想は、初長編監督作である今作から、既に示されていたのだな・・、と思った作品でもある。