「ガン=カタを映画界にもたらした先駆作」リベリオン 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)
ガン=カタを映画界にもたらした先駆作
戦争により世界は大ダメージを受けた。
次の世界大戦が勃発すれば人類は滅亡してしまうのでは?
そんな危機感から、社会はとんでもないシステムを作り上げてしまった。
戦争は怒りや妬みといった感情から勃発するという考えから、一切の感情を封じる政策に打って出た。
その代理人として、クラリックと呼ばれる、感情発露のトリガーになる美術品や音楽、文学作品の所持を取り締まる特別捜査員が創設されている。
ンなバカなという無茶な設定を強いているのが本作。
政治だって感情なしに動かないだろ? つーか、子どものケンカじゃないんだから、感情を奪ったくらいで戦争なくなるなんて安直過ぎないか?
などと言うなかれ。本作はそれより大事なもので作られている。
ガン=カタ。
まるで拳を使うかのように両手に装備した銃器を使い、一対多数の近距離戦を制する武術。
この設定が本作の魅力を押し上げていると思う。
というか、映画『リベリオン』というタイトルは知らなくても、あるいは「ガン=カタ」というワードを知っている人は少なくないんじゃなかろうか。
二丁拳銃というだけなら、『リベリオン』以前にも存在した。
しかし武術の型をなぞらえたような動きで銃器を扱い、戦術ではなく技で敵を制圧する射撃術は、おそらく『リベリオン』が最初だと思う。
冒頭では光源がまったくない中、敵のささやき声とマズルフラッシュを頼りに位置を察知、たった一人でアサルトライフルやサブマシンガンで武装した集団を殲滅してしまう。
デザートイーグルみたいなオートマチックを片手で撃てば、ろくすっぽ制御できるわけがない。
おいおいリロードなしで何発撃ってんだよ。
いくらなんでも遮蔽なしに棒立ちしてたら当たっちゃうだろ。
などと無粋なことを言ってはいけない。この世界最強の武術ガン=カタは、攻撃と防御を最大化する体術を体系化したものなのだから。
どういう着想からガン=カタに至ったのか、永賀は知らない。
けれど単なる格闘戦では勝ち得ない一瞬の死と隣り合わせの緊張感、また銃撃戦では実現できなかった緊迫感の持続を、このガン=カタは獲得している。
その強烈にインパクトのある戦闘シーンは、剣術劇における殺陣に等しい見応えがある。
それに比べたら、感情を封じた社会で人間は正常に成長できるのか、そもそも人間関係は成立するのか、愛情もないのに結婚して子どもを育てるなんて不可能じゃないかといった疑問は愚問。
この種の疑問はどうだっていいのだ。
ガン=カタという戦闘をつなぐストーリーさえ維持できていれば、それ以上を望んじゃいけない。そんな気がする。
では評価。
キャスティング:8(クリスチャン・ベールが主演でなかったらガン=カタは成立しない)
ストーリー:7(ガン=カタの披露につないでくれてたら何でもよかった)
映像・演出:8(ガン=カタは見事)
殺陣:9(少し冗長のきらいはあるが、全体として見事)
ファッション:7(感情発露が禁止されてる世界のくせにオサレ)
というわけで総合評価は50満点中39点。
構えて、撃って、倒れるのガンアクションに飽きた人にオススメ。
流麗な戦闘シーンが大好物な人に超オススメ。