恋の凱歌(1933)
解説
「上海特急」「ブロンド・ヴィナス」に次ぐマレーネ・ディートリッヒ主演映画で、「ジーキル博士とハイド氏(1932)」「今晩愛して頂戴ナ」のルーベン・マムーリアンが監督に当たった。ヘルマン・ズーデルマン作の小説およびそれに基くエドワード・シェルダン作の舞台劇を原作に仰ぎ、上記マムーリアン作品の脚色者サミュエル・ホッフェンシュタインが「マタ・ハリ」のレオ・ビリンスキーと共同脚色したもの。撮影は「今晩愛して頂戴ナ」「紐育の仇討」のヴィクター・ミルナーの担当である。助演者は舞台俳優ブライアン・エイハーンを始め、「蒼白い瞼」「動物園の殺人」のライオネル・アトウィル、「夜毎来る女」「恋愛百科全書」のアリソン・スキップワース、「暁の耕地」「母」のハーディー・オルブライト、ニューヨークシアター・ギルドのヘレン・フリーマンという顔ぶれである。
1933年製作/アメリカ
原題または英題:The Song of Songs
ストーリー
父親に死別して寄辺なき孤児となった貧しい農家娘リリイはベルリンのとある裏町で貸本屋を営む伯母のラズムッセン夫人の家に寄寓することとなった。ある日貸本の顧客の若い彫刻家リチャード・ワルドウはリリイの美しさを認めモデルになってくれと懇願した。彼女はこの不躾な依頼を拒絶したが、彼こそはリリイが夢想の恋人だと感じている青年だった。リリイはある夜家を忍びでてワルドウのアトリエを訪れた。望みないと諦めていたワルドウは喜びのあまり製作も忘れてその夜は語り明かした。その翌夜から彼はリリイをモデルに等身大の塑像ソング・オブ・ソングスの製作に着手し、完成の日が近づくに連れ2人の心も結ばれて、ついに将来の約束を固く結んだ。ところがある日ワルドウのパトロンたるフォン・メルツバッハ男爵が彼のアトリエを訪ねて、リリイを見てその美に心を奪われ、ワルドウの恋をゆずってくれと頼んだ。ワルドウは自分の貧しさと男爵の富と地位とを較べ、リリイの幸福を願うあまり彼女を諦めて旅に出た。男爵は早速ラズムッセン夫人を訪れ大金を与えてリリイを邸に引き取ることを承知させた。リリイは打驚きワルドウを訪れると既に彼は出奔したあとだった。ワルドウの心持ちを知らぬリリイは、愛を裏切られたものと恨み、男への復讐を誓って、ついに男爵と結婚した。男爵夫人としての生活はもちろん彼女の心を慰めるものはなかった。ただ彼女に乗馬を教える若い園丁エドワードのみが唯一の友だった。男爵は中年男の愛欲の限りを尽くしてリリイを愛したが彼女は常に冷ややかだった。男爵は彼女の心がワルドウにあると考え嫉妬の炎に胸を焼いた。そしてある日旅にあるワルドウを招き、宴を開いてリリイと晩餐をともにさせた。彼女はその夜初めてワルドウの出奔した理由を知り、今も彼が彼女を愛している事を知った。しかし男爵の恐ろしい思惑を察知したリリイは心にもない愛想尽かしをワルドウに投げた。そしてエドワードの許に走った。が図らずも火事を引き起こし、大騒ぎとなり、リリイはエドワードに抱かれて難を免れた。こうした様を男爵に知られたら命はないと家政婦に脅かされたリリイは人知れず邸を抜けでてしまった。数カ月後、ベルリンの盛り場のとある酒場に夜更けて酔いしれて現れる美しい街の天使があった。それがリリイの成れの果てだった。彼女の失踪以来血眼になってリリイを捜し歩いていたワルドウは一夜彼女とかいこうし、アトリエに連れて帰った。そこに立つ『ソング・オブ・ソングス』を見るや、リリイは生ける屍同様な今の自分の身に引較べて堪えられなくなり塑像を粉砕してしまった。同時にワルドウの力強い腕に抱きしめられてリリイは変わらぬ愛の力を感じるのだった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ルーベン・マムーリアン
- 脚色
- レオ・ビリンスキー
- サミュエル・ホッフェンスタイン
- 原作
- ヘルマン・ズーデルマン
- エドワード・シェルダン
- 撮影
- ビクター・ミルナー
- 美術
- ハンス・ドライアー
- 音楽監督
- Nat Finston
- 音楽
- ラルフ・レインジャー
- 作詞
- レオ・ロビン