「レオーネの映像、モリコーネの音楽、デ・ニーロの演技に酔いしれる」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
レオーネの映像、モリコーネの音楽、デ・ニーロの演技に酔いしれる
2020年7月6日、エンニオ・モリコーネが逝去した。イタリアを代表する映画音楽の巨匠である。91歳だった。モリコーネが「荒野の用心棒」の世界的大ヒットでマカロニ・ウエスタン(イタリア製西部劇)の作曲家として欠かせない存在となって以降、コンビを組み続けたセルジオ・レオーネ監督(1989年逝去)の遺作にして代表作が「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984)だ。
ハリー・グレイの自伝的小説を原作に、ニューヨークのロウワー・イーストサイドを縄張りとした、ユダヤ系ギャングたちの栄光と挫折を描いた一大叙事詩。1930年代初めの禁酒法時代から幕を開け、60年代後半と20年代初めの3つの時代が交互に描かれる。ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガヴァンに加え、バート・ヤング、ジョー・ペシ、さらに少女だったジェニファー・コネリーまで錚々たる俳優たちが、構想14年、前作から10年以上の沈黙を破ったレオーネ監督の元に集結した。
第37回カンヌ国際映画祭を震撼させた全編を貫く凄絶なバイオレンス描写とともに、レオーネ作品の重要なモチーフである愛と友情、金と記憶、裏切りと悔恨が、二人の主人公を鏡映しにノスタルジックに描かれ、3時間超えの時間の長さは感じない。イタリア人監督レオーネが、憧れていたアメリカへオマージュを捧げたフィルム・ノワールだ。
光と影、クローズアップの多用と遠景を織り込んだ緻密な画面構成、フラッシュバック、長回し、さらに鏡、覗き穴、電話などを効果的に用いて登場人物の心情を表現。そして、名曲「アマポーラ」とともにモリコーネの音楽が物語を語っていると言っても過言ではない。また、当時のマンハッタンを再現した映画美術も素晴らしく、脚本、撮影、衣装など最高のスタッフで作り上げたスケールと豪華さに圧倒される。