「勝ってもそれなりに辛かった戦後」我等の生涯の最良の年 everglazeさんの映画レビュー(感想・評価)
勝ってもそれなりに辛かった戦後
WWIIで従軍し、同郷へ帰還する道中で仲良くなった米兵3人。
両義手の若き水兵Homerは、中流家庭と思しき邸宅へ、
元銀行マンの中年軍曹Alは、コンシェルジュやエレベーターボーイが居る超高級アパートメントへ、
そして戦地で英雄となった大尉Fredは、線路と高架橋に近いボロ家へ、
それぞれ帰宅する。
“Mrs. Miniver”では、開戦によって従来の社会的階級を超えた新たな価値観の到来を予感させましたが…、軍隊の階級は、戦前から引き継がれた社会格差を逆転させることはできないのだと、冒頭から冷ややかな現実を目の当たりにします。ひょっとすると焦土と化した惨敗国の方が、一発逆転のチャンスが転がっていたのかも知れません。
彼らが元の家庭に、そして戦後の社会にどう溶け込んでいくかを丁寧に描いており、その内容は教科書のように立派で分かりやすいです。まぁ少々綺麗事が過ぎるという気がしないでもありません。
しかし、撮影を開始した1946年に、これだけ冷静に大戦を分析し、映画として発表していることに驚きます。WWIIを美化せず、また勝利した国家や兵士を英雄視することなく、戦後のアメリカを国民目線で公平に描写していると思いました。戦争の意義、原爆の後遺症や日本兵の所持品、硫黄島の話題が軽く出て来ます。76年経ってもまだ民間人の苦しみが続くことを知っていたら、原爆投下を再考したでしょうか。
Alの娘Peggyは、まさにアメリカの良心の象徴として描かれています。帰還した父親に、国内戦線はしっかり守れたから心配しなくていいのよと、模範的国民のような発言をしたり、悪夢にうなされるFredを優しく介抱したり。その上、勤務先は病院(車には赤十字らしきマーク)という彼女。ドラッグストアで働くFredを憐れむように見つめるのは、命懸けで戦ってくれた復員兵に理想の職場を提供できない母国の不甲斐なさを嘆いているのであり、愛がなく苦しめるだけの家庭環境から、誰かが(Fredを)救わなきゃ!と意気込むのは、友の不幸を見て見ぬ振りしてはいけない、助けないとダメだ!という、アメリカらしい(建前の?)正義感なのです。略奪女ではなく、むしろ自由の女神です。
圧巻なのは、遥か彼方まで地上を埋め尽くした、解体待ちの無数の戦闘機。戦後は手の平を返すように用済みで邪魔となり、廃棄・再利用される機体の山。職も妻も失い、故郷に居場所を見出せなかったFredと重なります。
戦争は体験した者しか理解できない。
命を預けることになれば、自ずと人を見る目が直感的に養われる。融資を決めるAlやFredの新たな雇用主が、復員兵の気概や度胸を素早く見抜く辺りには、単なる仲間意識や共感以上のものを感じました。それは、Mr. Miltonが声高に述べた国家の理想に近付くために、最も大切なもののように思えました。
個人的なベストシーンは、機内で先に起きたHomer君が、雲上の朝陽に静かに感動する所ですね。直後不安に駆られるように表情が曇りますが、生きて帰れて良かったのだと、辛くなったら思い出して欲しい。。
なぜ ”the best years of our lives” なのか…、勝利の余韻と共に、愛と希望に溢れていた時代…ということでしょうか。
それにしてもあれだけの飛行機が余っていたなんて…、日本との国力の差を痛感します。
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◯ the Three on a Match superstition
ひとつのマッチで煙草に火を付けると、1人目で敵が気付き、2人目で狙いを定められ、3人目が撃たれるということから、不吉な行いとされたよう。
WWI 起源説が有名みたいですが、色々な説があるようです。
“I think they ought to put you in mass production.”
“….. in the army I've had to be with men when they were stripped of everything in the way of property except what they carried around with them and inside them. I saw them being tested. Now some of them stood up to it and some didn't. But you got so you could tell which ones you could count on. I tell you this man Novak is okay. His 'collateral' is in his hands, is in his heart and in his guts. It's in his right as a citizen.”
“Our country must stand today where it has always stood, the citadel of individual initiative, the land of unlimited opportunity for all.”
everglazeさん
コメントへの返信有難うございます。
観られた方は映像を思い起こし、読まれた方は観てみたくなるようなレビューではないかと🤔
170分の長さを感じさせない、見応えのある作品でした。
everglazeさん
まるで映画のパンフレットに載っている解説文のようなeverglazeさんのレビューですね✨読み応えがありました(^^)
「古き良きアメリカ」(←個人的な印象です)的な雰囲気が漂う作品でした。