劇場公開日 1953年8月11日

「忘れられた人々=私たちがみなくなった人々」忘れられた人々 abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5忘れられた人々=私たちがみなくなった人々

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

戦争が忘れられない50年代の人々の現実。スラム街に生きる子どもは教育もまともに受けられず、親からの愛はもらえないし、そもそも親がいないことだってある。だから幼くして働きに出なくてはいけないし、家事労働もしなくてはいけない。不良になることだってある。けれど彼らは可哀想なだけではない。盲目の老人や足がない男を襲って、金銭や荷物を強奪することだってあるのだから。弱き者がさらに弱き者に酷い仕打ちを与える。単純に愛と信頼は存在しない。普遍的な悪の事象だ。

盲目の老人は目が見えないが、現実がよく見えているし、ペドロは〈事件〉を見たが見ないふりをしたから、幻想/夢が見える。母や所長、ハイボはペドロのことをちゃんと見ていない。だからペドロが悪を取り払い善良になる物語と思える。
しかし上述の図式はあまりにも単純だ。老人に悪人の要素はあるし、ペドロが悪から逃れる行動は、彼をどんどん悪に染めていく。母やハイボに更生/更正の余地はない。単純な図式に当てはめようとすればするほど、本作をちゃんと見ていないことを宣告されているようだ。
誰しもに悪の要素がある。陳腐な相対主義に還元されそうで危ういが、ゴミ山に打ち捨てられることで徹底される。まず残酷さをみよ、と。

まぬままおま