わが谷は緑なりきのレビュー・感想・評価
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【19世紀末のウェールズの炭鉱町で誇り高く生きる一家の人々の山あり谷ありの人生を、ジョン・フォード監督が人間性肯定の視点で描いた気品溢れる作品である。名シーンテンコ盛り作品でもある。】
■19世紀末、ウェールズの炭鉱町。
モーガン家の男たちは炭鉱で働いていて、貧しいながらも平和に暮らしていた。だが炭鉱経営者が賃金カットを断行したことから波乱が生じていく。息子たちは家を出て、家族は末っ子・ヒューを残してバラバラになってしまう。
◆感想<Caution! 結構内容に触れています。>
・学はなくても、一家を支えて来たモーガン家の父親の凛とした姿が素晴しい。六男、一女そして働き者の妻からの敬愛を受ける姿。
ー 夕食を囲むシーン。父親の前に肉料理が妻から供され、父親はそれを子供達に切り分けるシーン。食事中は私語厳禁である。だが、皆嬉しそうに食事を摂っている。-
・だが、彼らが働く炭坑は賃金をカットしていって・・。
ー 時代的には仕方がないのだが・・。労組を結成しようと動く兄たち。だが、父親はそれに反対する態度を取る。故に、父親に対し炭鉱夫たちが取った態度に毅然として、雪降る中モーガン家の母親が言い放った言葉。”私の夫に何かあったら、許さないよ!”この父にしてこの母在りのシーンである。だが、その帰り際、母と末っ子のヒューは凍てつく川に落ちてしまう。-
・一方、姉のアンハードは清廉な牧師に恋するも、(そして、牧師も彼女に惹かれつつも、神の道を選んだと言って、彼女の想いを判りつつも身を引く。が、彼の想いは後半の教会での民に対する言葉で爆発する。)炭坑の主の尊大な息子との結婚を承諾するのである。
■今作を彩るのは、冒頭から炭鉱夫たちが出勤、退勤時に奏でる歌声である。同じく炭鉱夫たちが結成した楽団が名誉を得る「ブラス!」は、明かに今作の影響を受けている。
・そして、春を迎え、療養していたモーガン家の母親が回復するシーン。炭鉱夫たちはモーガン家の前に参集し、祝いの歌を捧げるのである。
ー それを、恥ずかし気に、けれども嬉しそうに、皆の前で聞く婦人の姿。又、ヒューも牧師の支えにより、歩く事が出来るようになる。-
・ヒューが、村で初めて学校に通うシーン。愚かしきジョナス先生の言葉にもめげずヒューは学校に通うが、当然の如く級友、先生からの嫌がらせを受ける。
ー ココでも、炭鉱夫たちは、ヒューの窮状を救うのである。多少、荒っぽいが・・。-
■学校を首席で卒業したヒューが選んだ職業。それは炭鉱夫であった。
ー モーガン家の彼の両親はそれに驚くが、止めない。-
・兄、イヴォールが炭鉱事故で亡くなるも、彼の子供を美しき妻ブロンが産むシーンも印象的である。
・そして、アンハードが夫の元を離れ一人暮らし始めた時に訪れたヒューが言った言葉。更に根拠のない噂を言いふらす町の人々に言い放った牧師の怒りの言葉。
ー 根拠のない噂を言いふらしていた女性達が、眼を伏せる姿・・。-
■だが、モーガン家の父も炭鉱事故で命を失う。
<今作は、或る炭鉱の町で生きる家族の流転の人生を描いた作品である。
だが、今作の根底には、人間性肯定の視点に基づく、家族の絆をベースにした深い感動が込められている。それが素晴しいのであり、心に響くのである。
初見であるが、ジョン・フォード監督の作品の中の傑作の一品であろう。>
家族愛をひしひしと感じた
西部劇映画で有名なジョン・フォード監督がこのようなヒューマンドラマを作っていたとは驚きである。
炭鉱で働く家族の話で、50年間住んでいた炭鉱の町を去る主人公を通して、子供の頃の思い出が語られる。炭鉱のスト、姉の結婚や学校でのいじめ問題もあるが、中心は家族愛で、泣くことはなかったが実に感動的な物語だ。成績がよかった主人公が進学を諦めざるを得なかったのが切ない。
その主人公の子役のロディ・マクドウォールが可愛い。大人になってからも結構活躍しましたね。猿の惑星シリーズでは猿にも変身しました。
心の中にある故郷
イギリスのロンダ渓谷の炭鉱で働く労働者達の日常や当時の様子が活き活きと描かれていた。
末っ子の男の子ヒュー(ロディー・マクドウォール)の無垢な表情が健気でとても可愛らしい。
時を経て故郷の様子は変わってしまったけれど、私の心の中には家族と過ごしたあの頃の記憶が変わらず存在し続けている…生まれ育った故郷、そして家族と過ごした日々、ラストの語りか沁みる。
NHK-BSを録画にて鑑賞
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