劇場公開日 1956年4月1日

「青春の悲愁~わが生涯の最良の一篇」わが青春のマリアンヌ 細谷久行さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5青春の悲愁~わが生涯の最良の一篇

2014年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の過ぎし青春へのノスタルジーであり他に類例をみない詩情あふれる青春映画だ。

まず舞台設定からして素晴らしい。霧に包まれた深い森、湖、古い館・・・。そのほとりの寄宿舎に教育を共にする多感な思春期の少年達の一団が住んでいる。彼らは湖の向こう岸に立つ「幽霊屋敷」と呼んでいる古い館にボートで乗り込む。だが大きな犬2匹に襲いかかられ早々に退散。ひとりヴァンサンだけが残され暗い館に入ることが出来る。そこで美しい乙女マリアンヌに出会う。二人はたちまち恋に落ちる・・・前世から約束されていたかの様に。

この出会いのシーンは素晴らしいの一語に尽きる。これ程までに女性を美化し神秘化し理想化して描写した例をわたしは知らない。しばし現実を忘れさせ陶酔させられる至福のときである。

しかしやがて二人の間は引き裂かれてしまう。マリアンヌを幽閉状態から救出するために湖を泳いで渡ろうという命がけの挙にでるヴァンサンであるがその目的は果たせない。

やがて別れ、旅立ちのときが来る。それは永遠にマリアンヌの面影を求めての果てしない旅なのだろうか・・・。

母への思慕と美しいマリアンヌへの憧れのだぶった夢多き青春の心情が甘美に描かれている。

細谷久行