「ガイ・リッチーのすべてが詰まっている」ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 百ももさんの映画レビュー(感想・評価)
ガイ・リッチーのすべてが詰まっている
当時29才のガイ・リッチー監督長編デビュー作。製作は当時26才のマシュー・ボーンで、20代コンビによる斬新なイギリス映画として、若者を中心に高い評価を得てヒットしました。当時イギリスでは、音楽、美術、そして政界をも巻き込んだクール・ブリタニアというイギリス文化の新しい潮流ができていましたが、そんな時代を象徴する一作でもあったりします。
脚本は監督のガイによるもの。何より、本作の魅力を決定づけている要因です。本当によくできた脚本で、観るたびに唸らされます。ロンドンの下町を舞台に、ギャンブルに負け借金を背負った4人の若者が、なんとか借金を返そうと奔走し、そこに強盗団や大麻を育てる金持ち大学生、黒人ギャングなどが絡んでくることで、馬鹿馬鹿しい(これ誉め言葉)大騒動を巻き起こすストーリー。登場人物が多く複雑な構成にも関わらず、ガイはその複雑な要素を巧みに繋げてダイナミックにストーリーを展開させます。ラストは本当に可笑しい。あれだけしっちゃかめっちゃかになりながら、最後には全て解決してしまったかのようなのですから(笑)観終わった時、思わずニンマリしてしまいます。
ガイは見せ方も上手い。若い監督らしく、エッジをきかせて何気ないシーンもかっこよく見せます。音楽のチョイスもいいですね。特に"I Wanna Be Your Dog"がかかるシーンなんかは。
ガイの、ロンドンへの愛を感じさせてくれるのも大きな魅力です。それも、観光地として名高い表のロンドンではなく、犯罪の絡んだ裏のロンドン。ロンドンという街を愛していて、内側からロンドンを観察している人でなくては描けない世界でしょう。そしてそこに暮らす人々への共感と暖かい眼差しも感じられる。馬鹿な登場人物ばかりだけど、彼らはみな個性的で魅力的です。ロンドンのストリートから痛烈な一撃を喰らわすようなエッジやユーモアセンスも、この街を愛していなくては生まれ得ないもの。
新人監督ガイ・リッチーの、若々しい才能とロンドンへの愛に溢れた傑作です。やはりガイを語るには、絶対に観ておかなくてはならない作品ですね。