劇場公開日 2024年4月5日

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「まさに、映画史に残る不朽の名作!!」ローマの休日 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0まさに、映画史に残る不朽の名作!!

2025年3月13日
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鑑賞方法:その他

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《金曜ロードショー新吹き替え版》にて
アン王女(アーニャ):早見沙織
ジョー・ブラッドレー:浪川大輔

【イントロダクション】
イタリアのローマを訪問した某国の王女が、屋敷を抜け出した先で出会った新聞記者と僅か1日の恋に落ちる様子を描いた不朽の名作。
映画史に燦々と煌めく永遠のヒロイン・アン王女を、同じく映画史に残る永遠の大女優オードリー・ヘプバーンが演じる。王女と恋に落ちる新聞記者・ジョー役にグレゴリー・ペック。監督にウィリアム・ワイラー。脚本にダルトン・トランボ(当時のハリウッドの赤狩りにより、イアン・マクレラン・ハンターの名義を借用)、イアン・マクレラン・ハンター、ジョン・ダイトン。

【ストーリー】
某国の王位継承者であるアン王女は、ヨーロッパ各国を親善訪問中であり、最後の地がイタリアのローマであった。しかし、形式的で不自由な訪問内容と、過密スケジュールによる疲労感で、不満は限界まで募っていた。ある晩、王女は大使館を抜け出し、夜の街を彷徨う。

寝る直前に医師から打たれた鎮静剤の影響で、王女は意識が朦朧とした状態でベンチで眠ってしまう。そこへ偶然、アメリカン・ニュース社の新聞記者であるジョー・ブラッドレーが通り掛かり、介抱の為自宅へと招く。

翌日、前日の仲間内とのギャンブルや王女の介抱ですっかり寝坊してしまったジョーは、慌てて出社する。上司に呼び出された先で、王女は急病により予定されていた会見を延期した事を知らされる。新聞の一面に目を通すと、載せられていた王女の写真は間違いなく今現在自宅で安眠中の彼女だった。王女の独占取材による大スクープをものにしようと、ジョーはカメラマンのアーヴィングを電話で呼び寄せる。

目を覚ました王女は、ジョーに嘘を吐いて別れを告げると、大使館へは戻らず、ジョーから借りた金を手に市場や美容院、ジェラートを満喫する。その様子を陰から見ていたジョーは、偶然を装って彼女に近付く。ジョーは、自身を販売関係の会社員と、王女は寄宿学校から抜け出した学生だと、互いに身分を偽り、ローマ観光に乗り出す。

スクーターに乗り、真実の口を訪れ、夜間にはテヴェレ川のほとりで屋外ダンスを楽しむ。しかし、王女の行方を捜索していた秘密捜査官達が王女を連れ去ろうとする。抵抗する王女と、それに加勢するジョー達。やがて、地元警察まで巻き込んだ大乱闘の末、2人は川に飛び込んで逃げる。決死の逃亡劇を通じて、2人の間には次第に恋心が芽生えていた。

ジョーの部屋に戻ってきた2人。しかし、ラジオのニュースで国民が自分の身を案じている事を知った王女は、自らの義務を果たすべく大使館に戻る事を決意する。ジョーは王女を車に乗せ、大使館の近くにまで送り届ける。

翌朝、ジョーは王女との秘密を守る為、アーヴィングに撮らせた写真も公表しない事を決意する。1日遅れで王女の記者会見が開かれ、ジョーとアーヴィングも参加する。
王女は、会見場を訪れたジョー達の姿を目の当たりにして、初めて彼らの正体に気付く。ある記者から、「今回の訪問で、最も印象に残った土地はどこか?」と尋ねられると、王女は形式を無視して「ローマです」と答える。

会見後、奥の間へと去って行く王女と、会場を後にする記者達。ジョーは1人会見場に残り、やがてゆっくりとその場を立ち去っていく。

【感想】
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015)を鑑賞したので、ダルトン・トランボがハンターの名義を借用して書いた本作が気になり鑑賞。

映画やドラマには、時に「この人なしでは成立しなかった」と言える奇跡とも呼べる瞬間(シーン)、奇跡によって齎されたと言える作品が存在する。そして、本作のオードリー・ヘプバーンはまさしくそれである。

とにかくアン王女の純真無垢さと天真爛漫さ、それを全身で表現し切ったオードリー・ヘプバーンの演技が眩しい。まさに、映画史に残る永遠のヒロインだろう。
王女として、日々多忙な公務をこなさなければいけない窮屈さと、そこから抜け出しブラッドレーとの泡沫の恋を満喫する姿の対比が見事。
長い髪を理容室でカットし、ショートヘア姿をアップで捉えた映像の「美人は何でも似合う」という問答無用、暴力的なまでの圧倒的な美が炸裂する瞬間が凄まじい。
かと思えば、大使館を抜け出す際や、スクーターを嬉々として運転する意外とお転婆な姿は実にキュート。
しかし、やはり何と言っても、ふとした瞬間に見せる王女としての威厳溢れる凛とした表情の破壊力の凄まじさ。アップで映された瞬間の煌めきには、思わず目を焼かれたかのような衝撃を受けた。

意外にもコメディチックな話運びで、ジョーから1,000リラ(1ドル50セント)だけのお金を渡され、街を一人歩いていくシーンは、思わず「え?それでお金足りる?大丈夫?」とハラハラさせられた。

ジョー役のグレゴリー・ペックも負けず劣らず素晴らしい。
ラスト、アン王女が立ち去った後、記者達がゾロゾロと会見場を後にする中で、一人王女が消えて行った出口を見つめるジョー。その胸中は、昨晩、王女が路地の角を曲がった後を、車中で静かに見つめていたのと同じ気持ちだったのではないだろうか。
「戻ってはこないだろうか?」
しかし、2度目も同じく、王女は戻ってこない。泡沫の恋は、まさしく淡く儚く幕を閉じる。しかし、互いがあの日を忘れる事は、決してありはしないだろう。

王女が昨夜の別れ際に言ったように、「振り返らず」、静かに靴音を響かせて会見場を後にするジョーの姿が切ない。

【新吹き替えに関して】
吹き替えキャストの早見沙織さんの演技には、改めて感嘆させられた。元々、好きな声優さんではあるのだが、アン王女の王女としての気品ある振る舞いと、年頃の女性として世俗に興味を示す天真爛漫さとの演じ分けが素晴らしかった。

浪川大輔さんの演技も、男前なジョーの立ち振る舞いにマッチしており、王女との別れ際の台詞のやり取りには思わずウルッとさせられた。

【総評】
映画史に残る不朽の名作の名に恥じぬ堂々たる一作だった。オードリー・ヘプバーンの魅力が全編に渡って炸裂しており、その煌めきに完全に心奪われてしまった。

緋里阿 純