「トリュフォー監督の個人的女性美讃歌の告白映画」恋愛日記 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
トリュフォー監督の個人的女性美讃歌の告白映画
既にフランス映画界を支える名匠になったフランソワ・トリュフォーが、自由に衒いなく映画を作り楽しんでいる。ここ数年の代表作に挙げられる傑作と比較しては決して質的に高くは無いが、トリュフォー監督の本音が分かり易く描かれている点で実に面白い映像作品だった。個人的な女性美讃歌を突き詰めたトリュフォー監督の正直な告白映画と言えよう。
主人公の男は、女性の美しい脚を求めて、それが唯一の生き甲斐のように追求する女たらしである。女性に対して常に優しく親切であり、その点だけ見れば好人物と言える。ただ、本人が意識しないところで、涙ぐましい努力を続けるのが病的に見えて痛々しく、同じ男性としては同情してしまう。それでもトリュフォー監督は彼の生き方を肯定し、最期は命まで捧げる純粋さを表現するのだ。
映画の導入部は、主人公の葬儀シーンから始まる。参列者の女性たちがぞろぞろとお墓に急いでいる。それを訝し気に観ているひとりの紳士が、監督トリュフォー自身なのだ。これは、ヒッチコック監督を敬愛するトリュフォー流映画の楽しみ方。
女、女、女のフランソワ・トリュフォー監督のフランス映画らしい作品。ラストの映像と音楽の使い方にトリュフォー監督のセンスが窺われる。男の幸せとは、真似は出来ないが参考のひとつにはなるかも知れない。
1978年 9月6日 高田馬場パール座
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