「ツッコミどころ満載のサムライ・マカロニ・ウェスタン」レッド・サン いたりきたりさんの映画レビュー(感想・評価)
ツッコミどころ満載のサムライ・マカロニ・ウェスタン
新年の「初笑い」はこの映画から——。というわけで初めて観ました『レッド・サン』。
いやぁ、テレンス・ヤング監督のことだから、いちおう「アクション+ちょいエロ」の建て付けになってはいるんですが、ウワサにたがわぬツッコミどころ満載の一作でしたね。でも案外楽しみました。
まず、フランス・イタリア・スペイン合作による本作を一言でくくると、ずばり「サムライ・マカロニ・ウェスタン」(見たそのまんまやんか)。
本作初公開の前年(1970年)に封切られたドン・シーゲル監督の『真昼の死闘』が、やはりメキシコを舞台にフランス軍と戦うという風変わりなウェスタンだったので、西部劇斜陽の当時こうした奇手が流行っていたのかも、と思ったりして。
で、本作の時代設定は「1870年」ですが、江戸幕府による万延元年遣米使節派遣が1860年、大政奉還が1867年ですから、そのあたりは「よきにはからえ」といった感じでしょうか。
アメリカ大西部とは明らかにちがう、灰色岩だらけの殺伐とした荒野を馬で駆け巡るさまはまるで『隠し砦の三悪人』みたいだし、蒸気機関車が出てきたり、イーストウッドばりの早撃ちで無法者たちがバタバタ倒れたりするのは『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』のよう。
そんな本作最大の目玉が「三大スター競演」。ちなみにチャールズ・ブロンソンは公称身長174cmで封切当時50歳。同じく三船敏郎は身長172cmで51歳。アラン・ドロンが身長178cmで36歳——なるほど、悪役のアラン・ドロンはともかく、バディを組んだ世界のミフネとブロンソンは年齢・身長ともに近く、互いに見劣りしないですね。
ちなみに女優陣もなかなか「豪華」で、ウルスラ・アンドレス、モニカ・ランドールがそれぞれ「ぽろり要員」その1・その2。そのほかキャプシーヌなんかもチョイ役で出てきます。
さてここで、気になった数々の迷場面、珍プレー(?!)を以下順不同で挙げておきます。
1.
なんといっても一番の衝撃は、ブロンソンと共に野宿する羽目になったミフネが、やおら竹皮包みのおにぎり弁当を広げて箸で食べるシーン。瞬間目視したかぎりでは、おにぎり三種(海苔むすび、混ぜご飯にぎり、おかか醤油むすび)×数個づつに加え、たくわん、メザシ、厚焼き玉子のおかずといった豪華ラインナップ。質・量とも大変ボリューミーなこの弁当、一体どこに隠し持っていたのでしょう?
しかも翌日、ブロンソンに逃げられたミフネが一人で再び野宿していると、またしても、どこからか豪華おむすび弁当が出現。ミフネの着物の懐は「ふしぎなポケット」? 叩けばおむすびが無限に出てくるのか??
ちなみに、弁当を分けてもらったブロンソンはメザシに鼻を近づけ、うぇっ、と顔をしかめてポイポイ捨てていました。このバチ当たりめ!
2.
ミフネとブロンソンの喧嘩シーンで、ミフネの連続背負い投げをくらってボコボコにされたブロンソンが、ぽつりと一言「今日はこのくらいにしといたるわ」的なセリフを吐きますが、これって池乃めだかのギャグちゃうねん?
3.
ミフネが手裏剣みたいにポンポン投げる小柄小刀(こづかこがたな)。あれって通常、太刀の鞘に1本のみ装着されているものだと思いますが、彼は常に何十本も懐に忍ばせているのです。
4.
ミフネがやたらと太刀で突き(刺突)を連発して、敵の身体からドババと血が噴き出すのは、一種の「観客サービス」だと思いました。またミフネが娼館で美女と一夜を過ごすのも、おそらく同じ理由からですよね。でも、そうするとミフネが、雪山でたまたま見つけた露天温泉に突如ふんどし一丁で入浴するシーンはいったい誰得?
5.
ブロンソンは、瀕死のミフネから「全権大使に返却を頼む」と託された備前守の脇差を、ミフネの墓に立てた十字架の“横棒”としてあっさり使っちゃいます(ちなみに“縦棒”はミフネ自身の太刀)。ここはひとつ、『七人の侍』を見倣って土饅頭に刀を突きたてるくらいのことはしてほしかったなぁ。
6.
列車強盗たちが日本使節団の立て籠もる車両に押し入ると、なぜかその車内だけ和風の内装で畳敷き。そこに使節団一行は鎮座しているのです。
7.
騎兵隊は列車強盗団に蹴散らされて以降さっぱり出てきませんが、どこに行っちゃったのか。まさか捜索打ち切りとか。いやいや、それはないでしょ。
8.
ブロンソンは、一体どうやって電信線のあんな高い所に宝剣をくくり付けたのでしょう。
…まだまだありますが、一応ここらで。