レッツ・ゲット・ロストのレビュー・感想・評価
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ヤク中のロクデナシ、でも愛すべき最高のミュージシャン
ウイリアム・クラクストンが撮ったチェットの写真が好きだが、この作品は監督ブルース・ウェバー、甘い空気感と鋭さを捉えたミュージシャンの美しい写真が有名な写真家、どちらの写真家の撮ったチェット・ベイカーも美しく格好良く、それだけ人の心を捉える画になる存在なのだと思う。
大好きなチェットのドキュメンタリー4Kレストア版ということで、勇んで鑑賞。つくづく、この人はその時代だから生きられた人で、今だったら絶対アウトと思う。本当にロクデナシ。でも、何故かミュージシャン仲間も、女性達もほっとけない。
彼の魅力はその声と、唯一無二のラッパの音色。レコーディング風景があるが、若干曇ってはいるけど、でも58歳でも全盛期とほとんど変わらないあの声。ドラッグと酒に溺れてるはずなのに、声が守られている不思議。生まれながらのミュージシャンと語られていたが本当にそうなんだと思う。ただ代わりに見た目がかなり老けていて70歳と言っても不思議ではないくらに見えた。58歳、早すぎる死だけど好きに生きたのだから神様はやはり平等なのかも。
ファンには最高の映画でした。
伝説の裏側
ウエストコーストジャズ好きは観るべき
1988年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️✨✨
2025年11月、4Kレストア版・リバイバル上映にて鑑賞。
音楽ドキュメンタリーは今までも何本も観てきましたが、この作品はその中でも最も優れた・印象に残る1本でした。
彼の女性遍歴やらこれまでの人生がもちろん語られるわけですが、そんなのはハッキリ言って、どうでも良いのです笑
心に残るのは彼の歌声やトランペットの音色です。
一聴すると、どこか危うげで「揺れた」そのトーンは、正に綱渡りでもするかのようです。しかし,スッと心に落ちて来るのは、あまりにも完璧なトーンです…これに魅了されない人なんているんでしょうか?正に希代の“女たらし”です。
悪魔に魂を売ったのは“ロバジョン”だけではなかったようです笑
*観客のとても少ない・雑音の少ない映画館で鑑賞出来て良かったです…笑
*薄いですが笑、パンフレット販売ありです。
天才トランペッターの悲劇を切り取った映画の奇跡
戦後のジャズシーン、男性ボーカルはシナトラ、ベネット、メル・トーメらの白人が有名になったけど、プレイヤーはほぼ黒人が占める中、突然現れた白人でしかもジェームズ・ディーンにも似たイケメントランペッターとして、当時のジャズレジェンド達も認めたチェット・ベイカーのドキュメンタリー。
薬物など問題を抱えるミュージシャンの話なので、功績を称えて、最後に悲しい感じで終わるのかなと観に行ったら、天才の悲劇を、亡くなる1年前の映像でみせてくれる、映画の奇跡のようなフィルムだった。
冒頭からオープンカーに女性をはべらせてモテモテのチェット。前半はほぼ、彼が何の努力もせずにのしあがる。練習もしないのに才能だけで、仕事に恵まれお金もオンナもついてくる。トランペットの腕だけじゃなくて、中性的な声を活かしたボーカルも魅力な彼氏。ボーカルで賞レースをナットキングコールと争ったくらいだからホンモノだ。
そんな前半部分の関係者インタビューでも、ちょいちょいネガティブなことをしゃべるヤツが紛れてる。ミュージシャン仲間が、オンナを寝取られたがあとでオンナがチェットは早漏だって言ってたとバラす。これが後半の布石。
後半は三度の結婚生活や、子どものことも掘り下げる。音楽の天才ゆえに欲しいものが全て与えられ、何が大切かということがわからない憐れさが伝わる。チェットのボーカルが全編で流れるが、このあたりになると歌さえウソくさく思えてくる。
関係者インタビューで登場する愛人が、シドアンドナンシーのナンシーみたいなやつだった。この女もボーカルで、チェットの音楽性に惹かれて親密になってる。チェットをオトコとしては舐めくさって、薬物を与えたりしてる。悪徳マネージャー的な立ち位置とわかる。しかも、この女の歌がヘタクソ。
ラストになって、この撮影の時のチェットが57歳と明かされる。薬物と歯の影響で70代にみえる。
映画撮影の感想に答えるチェット。
「あまり、できない経験だから楽しかったよ」
冒頭のオープンカーのカットやスタジオでの歌唱シーンがこの映画のためのフェイクドキュメントだったのか。
冬の日の陽だまりのような独特のチェットのボーカルが胸を刺す。
オールモストブルーは、感動的だ。
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