「天才トランペッターの悲劇を切り取った映画の奇跡」レッツ・ゲット・ロスト minavoさんの映画レビュー(感想・評価)
天才トランペッターの悲劇を切り取った映画の奇跡
戦後のジャズシーン、男性ボーカルはシナトラ、ベネット、メル・トーメらの白人が有名になったけど、プレイヤーはほぼ黒人が占める中、突然現れた白人でしかもジェームズ・ディーンにも似たイケメントランペッターとして、当時のジャズレジェンド達も認めたチェット・ベイカーのドキュメンタリー。
薬物など問題を抱えるミュージシャンの話なので、功績を称えて、最後に悲しい感じで終わるのかなと観に行ったら、天才の悲劇を、亡くなる1年前の映像でみせてくれる、映画の奇跡のようなフィルムだった。
冒頭からオープンカーに女性をはべらせてモテモテのチェット。前半はほぼ、彼が何の努力もせずにのしあがる。練習もしないのに才能だけで、仕事に恵まれお金もオンナもついてくる。トランペットの腕だけじゃなくて、中性的な声を活かしたボーカルも魅力な彼氏。ボーカルで賞レースをナットキングコールと争ったくらいだからホンモノだ。
そんな前半部分の関係者インタビューでも、ちょいちょいネガティブなことをしゃべるヤツが紛れてる。ミュージシャン仲間が、オンナを寝取られたがあとでオンナがチェットは早漏だって言ってたとバラす。これが後半の布石。
後半は三度の結婚生活や、子どものことも掘り下げる。音楽の天才ゆえに欲しいものが全て与えられ、何が大切かということがわからない憐れさが伝わる。チェットのボーカルが全編で流れるが、このあたりになると歌さえウソくさく思えてくる。
関係者インタビューで登場する愛人が、シドアンドナンシーのナンシーみたいなやつだった。この女もボーカルで、チェットの音楽性に惹かれて親密になってる。チェットをオトコとしては舐めくさって、薬物を与えたりしてる。悪徳マネージャー的な立ち位置とわかる。しかも、この女の歌がヘタクソ。
ラストになって、この撮影の時のチェットが57歳と明かされる。薬物と歯の影響で70代にみえる。
映画撮影の感想に答えるチェット。
「あまり、できない経験だから楽しかったよ」
冒頭のオープンカーのカットやスタジオでの歌唱シーンがこの映画のためのフェイクドキュメントだったのか。
冬の日の陽だまりのような独特のチェットのボーカルが胸を刺す。
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