ルートヴィヒ 完全復元版のレビュー・感想・評価
全9件を表示
神は細部に宿る
誰が言った言葉だったか、紙は細部に宿る、という言葉。
黒沢監督も好んでいたらしいが。
この映画も隅々にまで妥協のないこだわりがあって、
どの場面を切り取っても一枚の絵画のよう。
4時間の長尺はさすがにもう少しどうにかならなかったのか、とも
思わなくもないのだが、
こだわりにこだわりぬいた結果
これでもかなり削ったものなのだろう。
リアルな貴族、王族の暮らしぶりを拝見したという満足は得られる。
エンタメとして面白いかと聞かれると微妙。
ルートヴィヒが作ったノイエシュタイン城など
芸術は時代を超えて残っていくのだが
哀しいかな、そういう趣向とは裏腹に
彼の在位時代は残ることもなく。
政治というものに向かない人物が即位してしまった悲劇だ。
耽美派腐女子に特にオススメのドイツ歴史絵巻
ビスコンティ監督が制作したオリジナル4時間版のデジタルリマスター版。
主要キャスト3人を始め脇役に至るまで、若者は全員イケメン。女性陣も美人揃い。衣装もセットもロケも豪華で監督のこだわりが満載。特にオットー役のジョン・モルダー・ブラウンの病んでいく演技がよかった。
ストーリーは判明している範囲の史実にほぼ忠実で、豪華な歴史絵巻を見ているような気になれた。
それと、大作曲家ワーグナーが曲は素晴らしいのに本人がいかにカスだったか⁉︎が詳しく描写されているのも興味深かった。
豪華で退廃的な映像美
とにかく映像が優美。
いま、予算をかけて豪華に撮っても出せない美しさがある。
ルートヴィヒが公務に関心を示さなくなっていったあたりからのヘルムート・バーガーが良い。
前半の何をしでかすか分からない危ない感じから、顔も青白く周りが狂気と呼ぶ精神状態に向かってゆく様が見事だった。
耽美的な雰囲気の、ルートヴィヒ2世の髪型に惹かれて観た作品。 日本...
耽美的な雰囲気の、ルートヴィヒ2世の髪型に惹かれて観た作品。
日本では89年のビデオ発売時に「ルードウィヒ 神々の黄昏 復元完全版」のタイトルで特別上映。
おそらくこの時に観たんだろう。
たしかインターバルもあってなかなか難解な作品だなと思って観た記憶が残る。
神々がたそがれる、訳
「騎士伝説」を愛していながら、戦争に行かない王の苦悩は 我々には伝わり難い
映画はほとんど 室内劇の模様を呈するので(笑)
視覚的にも少々退屈する
外からの訪問者(エリザベート、神父、公爵、大佐など)の叱責と行動が 波紋を起こすのみ
後半 王が不安定になってから、ドラマ性もたかまり 結末へと突入する
「血の同盟」というが ヨーロッパでは上層部
(王や貴族)が 所詮、親戚縁者という意味であろうか
ビスコンティは この王に 血の近さ、血の濃さ、を感じたのだろう…
二人とも 女性よりも、美青年を好むのは(エリザベートは別格、監督にとってのシュナイダーもそう)
この血の濃さへの忌み、もあるのだろうと考える
(弟が錯乱するのは、戦争のせいだけではない… )
神々がたそがれる、訳である
王の嗜好で(監督も) 美男子、美青年が多々 配されている
この映画製作の時点では 男色ということを表現するのに限界があって(しかし、誰が見ても明らか… なのだが)暗示にとどまり、もう一つ 踏み込めなかったことが 前半の王の苦悩の伝わり難さの一因でもあるだろう
バーガーは この難役をよく頑張っている、後半から凄みが出て 感情移入も出来た
しかし、美男子揃いの俳優陣の中で 一番 輝いているのは、女性であるエリザベート役のシュナイダーであろう
得な役柄とはいえ、演技にもめりはりがあり、煌めくように美しい(思わず 目で追ってしまう!)
彼女の登場で 映画も締まり、女優としての成熟が感じられる
ドイツの歴史の知識がもっと有れば、 また違う見方も出来るかもしれないと思う
ちなみに かの国では、この王は「メルヘン王」と呼ばれているらしい
美男子のオンパレードなのも、お花畑を見てるみたい!
地位か自由か
庶民は財産もなく不自由な生活で、王侯貴族は派手で自由な印象だが、自由については、有象無象は法律がなければ無制限であり、稀少な存在程、制限され不自由になる。自由度の高い者の発言は軽く、不自由な立場の者の発言は重い。この為に稀少な王侯貴族、俗世なら社長や首相の命令は相当な重さを持つ。神に至れば絶対だが、一部は道徳や常識になっている。
孤独な役割 権威、権力、自由とは?
愛を知らない、愛されなかった子どもが王となり権力を手にするが、彼には自分の力をどう使うのかわからない。
王と親族、家臣、取り巻きしか出てこないので社会がどんなところなのか、わからない。
彼はきっとこのような環境で育ち、成人し、王となった。
弟は傷つきながらも戦場に行き、精神を病んでしまう。愛された人と婚約するが、愛する事が出来ないから彼女は傷つき、婚約も破棄する。役割や務めを果たせない自分に苛立つ。芸術のパトロンとしての役割に夢中になるが、うまく利用されてしまう。
人は彼の前には臣下、従僕でしかない。
昔、観た時は美しさ、芸術に孤独を癒す王のイメージだったが、今観ると果てしない孤独、愛のない人生に、魂が凍りついていくのを見ているようだった。
自由とは。
尺が237分、「愛のむきだし」と同じだ。
内容さえ良ければ(支持が得られれば)、この長さでも受け入れられるんですね。
国王ルートヴィヒの人生、本作で照射されているのは、社会的動物としての人間と自由についてなのではないか、と私は思いました。
自由とは何か、自由であることの代償は何か、そして、人は、観客であるあなたは、自由を希求しているか。
そんなことを考えながら観ていました。
全9件を表示