ルートヴィヒ 完全復元版のレビュー・感想・評価
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国王の悲劇
世界歴史および地理に弱い私は歴史絵巻ものは興味があってもなかなか、挑戦できず。
でも、ビスコンティの世界に浸りたくて、やっと観ました!
完全版は237分。約4時間。
配信で観たので、何度かに分けて観てしまいましたが、見応えはありました。
バイエルン国王・ルートヴィヒ二世、18歳で国王に即位し、40歳で謎の死を遂げるまでの半生を描いた作品。
ルートヴィヒ(ヘルムート・バーガー)は男色のようでしたが、時代的なこともあってか、あまり堂々と描いてなかったように思います。しかし、そうでありながら、従姉のオーストリア皇后エリザベートは特別な存在で、ルードウィヒの心のよりどころとなります。魂の恋人とでもいうのでしょうか。後にルードウィヒが伏せっている時にエリザベートが訪問したときに、「憐れな姿を見られくない」と逃げ回るところが印象的でした。エリザベートのロミー・シュナイダーが存在感があって美しい。ソフィーとの婚約が破棄に至ったのも、エリザベートが心の中にいたからでしょう。
エリザベートとの恋も実らず、ワーグナーにも思いは通じず、ルートヴィヒは王でありながら、公務にも気が向かず、孤独を抱えながら芸術に没頭していきます。ヘルムート・バーガーの繊細で神経質な面持ち、後半は顔色も青白くなり眼光も厳しく波乱に満ちた状態にのまれます。ついには国王の地位を奪われ、ノイシュヴァンシュタインを追われ、べルクの城で幽閉生活を強いられます。
ストーリーはかなり史実に近いと思いますが、実際のルートヴィヒは亡くなったときは、かなり太っており美男子の見る影もなかったと、どこかで読みました。映画では、やつれていたけれど、美形を保っていました。
政治などを司ることができず、芸術だけに逃避してしまった国王の悲劇でした。
ストーリーを追うのが精一杯で、映像美など楽しめないままでしたが、もう一度観るにはちょっと勇気が要ります。でも再度観てみたいと思う映画です。
それと、ルートヴィヒの弟オットー。どこかで見かけた顔と思ったら、『象牙色のアイドル』に出演した人でした。ミステリホラーのような映画です。大昔に見た映画ですが、主役のジョン・モルダー・ブラウンがすごく印象的で覚えています。
神は細部に宿る
誰が言った言葉だったか、紙は細部に宿る、という言葉。
黒沢監督も好んでいたらしいが。
この映画も隅々にまで妥協のないこだわりがあって、
どの場面を切り取っても一枚の絵画のよう。
4時間の長尺はさすがにもう少しどうにかならなかったのか、とも
思わなくもないのだが、
こだわりにこだわりぬいた結果
これでもかなり削ったものなのだろう。
リアルな貴族、王族の暮らしぶりを拝見したという満足は得られる。
エンタメとして面白いかと聞かれると微妙。
ルートヴィヒが作ったノイエシュタイン城など
芸術は時代を超えて残っていくのだが
哀しいかな、そういう趣向とは裏腹に
彼の在位時代は残ることもなく。
政治というものに向かない人物が即位してしまった悲劇だ。
耽美派腐女子に特にオススメのドイツ歴史絵巻
ビスコンティ監督が制作したオリジナル4時間版のデジタルリマスター版。
主要キャスト3人を始め脇役に至るまで、若者は全員イケメン。女性陣も美人揃い。衣装もセットもロケも豪華で監督のこだわりが満載。特にオットー役のジョン・モルダー・ブラウンの病んでいく演技がよかった。
ストーリーは判明している範囲の史実にほぼ忠実で、豪華な歴史絵巻を見ているような気になれた。
それと、大作曲家ワーグナーが曲は素晴らしいのに本人がいかにカスだったか⁉︎が詳しく描写されているのも興味深かった。
豪華で退廃的な映像美
とにかく映像が優美。
いま、予算をかけて豪華に撮っても出せない美しさがある。
ルートヴィヒが公務に関心を示さなくなっていったあたりからのヘルムート・バーガーが良い。
前半の何をしでかすか分からない危ない感じから、顔も青白く周りが狂気と呼ぶ精神状態に向かってゆく様が見事だった。
耽美的な雰囲気の、ルートヴィヒ2世の髪型に惹かれて観た作品。 日本...
神々がたそがれる、訳
「騎士伝説」を愛していながら、戦争に行かない王の苦悩は 我々には伝わり難い
映画はほとんど 室内劇の模様を呈するので(笑)
視覚的にも少々退屈する
外からの訪問者(エリザベート、神父、公爵、大佐など)の叱責と行動が 波紋を起こすのみ
後半 王が不安定になってから、ドラマ性もたかまり 結末へと突入する
「血の同盟」というが ヨーロッパでは上層部
(王や貴族)が 所詮、親戚縁者という意味であろうか
ビスコンティは この王に 血の近さ、血の濃さ、を感じたのだろう…
二人とも 女性よりも、美青年を好むのは(エリザベートは別格、監督にとってのシュナイダーもそう)
この血の濃さへの忌み、もあるのだろうと考える
(弟が錯乱するのは、戦争のせいだけではない… )
神々がたそがれる、訳である
王の嗜好で(監督も) 美男子、美青年が多々 配されている
この映画製作の時点では 男色ということを表現するのに限界があって(しかし、誰が見ても明らか… なのだが)暗示にとどまり、もう一つ 踏み込めなかったことが 前半の王の苦悩の伝わり難さの一因でもあるだろう
バーガーは この難役をよく頑張っている、後半から凄みが出て 感情移入も出来た
しかし、美男子揃いの俳優陣の中で 一番 輝いているのは、女性であるエリザベート役のシュナイダーであろう
得な役柄とはいえ、演技にもめりはりがあり、煌めくように美しい(思わず 目で追ってしまう!)
彼女の登場で 映画も締まり、女優としての成熟が感じられる
ドイツの歴史の知識がもっと有れば、 また違う見方も出来るかもしれないと思う
ちなみに かの国では、この王は「メルヘン王」と呼ばれているらしい
美男子のオンパレードなのも、お花畑を見てるみたい!
地位か自由か
孤独な役割 権威、権力、自由とは?
愛を知らない、愛されなかった子どもが王となり権力を手にするが、彼には自分の力をどう使うのかわからない。
王と親族、家臣、取り巻きしか出てこないので社会がどんなところなのか、わからない。
彼はきっとこのような環境で育ち、成人し、王となった。
弟は傷つきながらも戦場に行き、精神を病んでしまう。愛された人と婚約するが、愛する事が出来ないから彼女は傷つき、婚約も破棄する。役割や務めを果たせない自分に苛立つ。芸術のパトロンとしての役割に夢中になるが、うまく利用されてしまう。
人は彼の前には臣下、従僕でしかない。
昔、観た時は美しさ、芸術に孤独を癒す王のイメージだったが、今観ると果てしない孤独、愛のない人生に、魂が凍りついていくのを見ているようだった。
自由とは。
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