リラの門のレビュー・感想・評価
全8件を表示
【”ロクデナシな男の密やかなる善行。”今作は無職で酒飲みの善なる男と、友人の芸術家が偶然に人殺しを匿った事から起こる、一人の女を巡る悲喜劇を描いた逸品である。】
■仕事もせず年老いた母が働く中、日々酒を飲んで過ごすジュジュ(ピエール・ブラッスール)。
ある日、臨家の友人でもある芸術家(ジョルジュ・ブラッサンス)の家に警官殺しのピエール・バルビエ(アンリ・ヴィダル)が逃げ込んでくる。
2人は彼を追い出そうとするが、手から血を流している事に気づき、芸術家の家の地下室に匿う事になる。
ジュジュは、密かに想いを寄せる酒場を営む男の娘のマリア(ダニー・カレル)に、その事を喋ってしまう。
彼女は一人で芸術家の家に行った際に、ピエールに脅されるもキスをされ夢中になり、彼の南米に行こうという誘いに乗ってしまうのであった。
◆感想
・ジュジュはロクデナシではあるが、暴力は振るわない。何処か、達観したかのように毎日を生きている。それは友人である芸術家も同じである。
・二人は、イケメンの殺人犯ピエール・バルビエを最初は拒絶するが(当たり前である。)怪我をしているのを見て、手当てをし地下室に匿って上げるのである。人が良いとしか言いようがないが、今作を観ているとそれが当たり前のように思えるのである。
・ピエール・バルビエは芸術家が演奏をするマリアの父が営む酒場に出掛け、自分がキスをしたマリアがカウンターの中で働いている姿を見る。
そして、マリアを誑かして父親の金を盗ませて、共に南米に行こうと誘うが、実は彼はマリアとは別の地に行こうとしていたのである。
・その事実を知ったジュジュは、彼を問い詰める。そしてピエール・バルビエから拳銃を向けられるも怯まずに、マリアの為に立ち向かうのである。そして倒れ込んだ二人から銃声が響くが立ち上がったのは、ジュジュ一人だったのである。
<今作は無職で酒飲みの善なる男と、友人の芸術家が偶然に人殺しを匿った事から起こる一人の女を巡る悲喜劇を描いた逸品である。>
彼は何故そこまで必死になったのか?
今の時代にそぐわない
可笑しくて、面白くて、やがて悲しくて、ペーソスがあって、何だか深い 観終わった味わいは寅さんと同じなのです
ギター弾き
フォアグラの缶詰か、偶然にも強盗をかくまうことになるまでが、単純ながらも上手く作られている。ビストロの店主がニュースを読み上げるときに、子どもたちのバルビエごっこを映像に入れることも凝っている。
バルビエの世話をし、逃亡の手助けをするあたりは全体的にコメディタッチであるが、ジュジュが生きがいを見出したように生き生きしてくる。酒場のマリア(カレル)の設定は戦後混乱期における自由な女性を象徴しているような存在であり、好感が持てるなぁ。
奇妙な友情の話も素敵ですが、アーティストの弾き語りと子どもを上手く取り入れてることで締まった良作になっているんでしょうね。ラストをもっと丁寧に描いていたらもっと良かった。
お金持ちになったらフォアグラを君に
フランスの下町リラの、さらに小さな街角だけで繰り広げられる悲喜劇。
職無し金無し人情有り。ろくでなしのお人好しジュジュとその親友芸術家の元に突然逃げ込んできた指名手配犯ピエール。
とんでもないハプニングに対応するうちにだんだん湧いて出てくる友情とだんだん変わってくる人間模様をコミカルなタッチで描いた作品。とても面白かった。
60年前の映画などあまり観る機会もないのでちゃんと楽しめるか不安だったけど、そんな心配はご無用。
冒頭から引き込まれてしまった。
男声シャンソンに乗せ、初っ端からロクデナシ感を存分に発揮してくれるジュジュの行動に心掴まれる。
さてこれからどんなことが起こるのかしら、とワクワク。
一つ一つのアクションや表情がユーモアに溢れていて、たくさん笑わせられた。
フォアグラ缶詰のくだりがもう全部全部好き。
忘れた頃にまたぶり返されると本当たまんない。
年老いた母の超絶強気口調とラジオ体操に余念がないピエールとやんちゃな近所のがきんちょ達も大好き。
地下の扉に落ちちゃうピエールと太ってるから柵が倒れちゃうところは本当コント並みに笑える。
特にやんちゃチルドレンとの絡み方は面白いものが多い。
ジュジュを揶揄うような行動もどこかほっこりするものがあり、家に侵入されるシーンの緊張感と微笑ましさの絶妙なバランスも楽しい。
「バルビエごっこ」に励む彼らに合わせて新聞記事を読むシーンがとても印象的。
人の裏から人が出てきたり歌がシーンにピッタリ合っていたりと、舞台的な演出が多いなと思っていたけど、この読み上げの演出は50年前の作品ながらすごく新鮮でポップに思える。
傷付いた子猫の看病をするように、殺人犯ピエールをかいがいしくお世話する尽くし屋のジュジュとなんだかんだ付き合ってあげる芸術家。
如雨露シャワーがかわいくて好き。
次第に育まれるピエールとの友情のようなものに胸が熱くなるものの、その中身を思い知らされる時のショックたるや。
ドタバタ喜劇がだんだん雲行き怪しくなり、どう決着つけるのかとハラハラしていた先の最後には唖然。
どこからボタンを掛け違えたのか、気付いた時にはもう手遅れ。
自分のことに精一杯で他人なんて顧みていられないくらいで丁度良かったのかも。
自分に甘く他人に甘いジュジュの脇の甘さをまざまざと思い知らされる。観ている私の考えの甘さも。
尽くし尽くしてしまうと人は付け上がる。
恋愛のテクニックじゃないけれど、ちょっと一呼吸置くだけでもだいぶ違ったのかも。
軽い語り口とは裏腹に受難の物語ように思えた。
ツンと尖ったバストラインがとても綺麗なマリアの圧倒的なヒロイン感。
好きになっちゃうしかない小悪魔的な行動も夢中になった時の突っ走り方も、どこか危なげでプリプリして、彼女が画面に現れるたびに目を奪われていた。
メンズもレディースも、リアルタイムの50年代ファッションがあまりにも素敵でずっと悶えていた。
モノクロの映像の中の色とりどりを想像するのが楽しい。
ピエールの派手なスーツはベージュに紫系のチェックだろうとか、マリアのプリーツスカートはマスタード系だったらいいなとか、シルクのスカーフの小紋の色とか、ジュジュは絶対小汚いくすんだ茶色系の上着だろうなとか…。
あーーやっぱりサーキュラースカートが欲しいな。ボウタイブラウスと合わせたい。
猫がめちゃくちゃ可愛かった。
全8件を表示






