劇場公開日 1987年6月13日

「マッドな刑事と完成後に省かれた夜雨のロサンゼルス」リーサル・ウェポン ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マッドな刑事と完成後に省かれた夜雨のロサンゼルス

2021年2月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

クリスマス近辺の夜に起きた女性の投身自殺から浮かび上がる、ベトナム帰還軍人の麻薬犯罪組織に立ち向かう二人の凸凹コンビ刑事の活躍。

公開時に見てから全ての続編も観ているが、Netflixで配信されたので、一作目は20年振りに再見して思ったこと。

この映画の脚本で当時一躍注目を浴びて第一線に踊り出たシェーン・ブラックは、長いブランク(スランプ?)近年の『アイアンマン3』や『ナイスガイズ!』などで復活しているが、ケレン味の程良い塩梅の本作がとても良い。

本作で微笑ましいのは、白人のリッグス刑事と黒人のマータフ刑事が、全く人種間の壁がなく知り合い、相棒となる過程を自然に見せてくれるニュートラル感だと思う。当時も隠されていたのかもだが、今の分断されて人種嫌悪が更に炙り出されたアメリカを憂う。
個人的には、マータフの娘リアンナ(とても可愛い)がヒロインなのもいい。

ネタバレあり

映画のクライマックスは、監禁された敵のアジトから踊り出たリッグスとマータフの爽快なガンアクションが見所だが、この時のロサンゼルス大通りが、濡れた路面になっており、ネオンやクルマのライトで照り返された路面の光の美しさにハッとする。
周囲のクルマも多数の水滴を纏っており直前まで、実際に夜雨が有ったと推察される。

その観点から各場面を見直すと、冒頭にある朝のマータフ家の場面や夜のシーンのほとんどは、路面が濡れているか濡れた跡があり、雨の極端に少ないハリウッド、ロサンゼルスに、撮影の時期に雨が降っていて、それを生かした画面作りをしていると思う。
ちなみ映画内で明らかに雨が降っているのは、リッグスがショットガンで狙撃されるナイトシーンと奥さんの墓参りをする昼の場面のみ。

ちなみに、「リーサル・ウエポン4』のDVDにある特典映像に、本作の公開版からカットされた場面が収録されており、なんと夜雨の場面が2箇所もあった。
どちらも最愛の奥さんを事故で失ったリッグス刑事の心情に寄り添うカタチでの雨(悲しみ表現)であり、公開版にあればもっともリッグス刑事のマッドな行動に説得力が出たと思う。

本作といえば、銃器マニアには忘れられない拳銃でもあるベレッタM92Fが、リッグス刑事の愛銃としてクローズアップされて、その後のガンアクションでも15連多装弾数を生かしたアクションの礎を作った映画として記憶されている。(ベレッタ乱射は『男たちの挽歌』の方が早いが、個体のコマーシャル性はこちらの方が高い)

そういえば、エディ・マーフィーの『ビバリーヒルズ・コップ』のラストのガンアクションも素晴らしくて本作が参考にしているかも。

ちなみにこれもカットされた場面だが、マータフ刑事と出会う前の場面で、リッグス刑事は学校校庭をライフル狙撃する基地外と対決する場面があり、その優れた射撃能力を見せるシーンがあるが、重複するのかカットされている。

ベトナム後遺症や自殺志願などのテーマ扱いながら、ベテラン職人のリチャード・ドナー監督の明るい資質により本来なら重くなる物語をユーモアと軽快に演出しており、クリスマスムービーとしても爽やかに鑑賞できる。

最近の刑事アクションでは、省かれている場面で、容疑者を射殺した後の検証などがきちんと描かれているのもあり改めて見直すと面白いので、80年代刑事アクションの傑作だと思う。

ミラーズ