ラヴソングのレビュー・感想・評価
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レイキウとシウクワンとの、その二人にまた独特の関係性
そもそも、シウクワンとレイキウの二人が香港へ来た理由からして、「シャオティンとの結婚資金を稼ぐため」のシウクワンと、「借金返済の原資を稼ぐため」のレイキウとでは、ハナから「稼ぐこと」「儲けること」に対する温度には、大きな落差、温度差があったということだったのでしょう。
英会話学校のパートタイムをしながらマックでもバイト。テレサ・テンのレコードやカセットテープを売ってみても、思うように売れなければ、今度は「マッサージ嬢」に鞍替え。
レイキウは、その職業を世間に公言することを憚(はばか)っていいるようですし、「サービスしだいでは(まるまる副収入になる)チップも増える」という仕事ということですから、マッサージとはいうものの、「それなりの内容のお仕事」だったのだと思われます。
「贈り物の一件」からすると、シウクワンに対するレイキウの間にも、知り合った当初から、恋愛感情のような思慕が皆無だったとも言い切れなかったことは、確かなようですけれども。
しかし、その後、シウクワンは、婚約どおりにシャオティンと結婚。
後には、料理人としての地歩を固めていたー。
一方のレイキウは、女性企業家として成功とはいうものの、しかし、その後、シウクワンとの再会を果たしたニューヨークでは(中国人観光客相手の?)観光ガイドを生業(なりわい)としていた。
再会の折りには、シウクワン・レイキウの二人は、すっかり別の人生を歩んでしまっていたのですけれども。
しかし、辛く不遇な(?)香港時代を経験した二人には、単なる恋愛関係や、ましてや「大人としての女と男との関係」などは遥かに超越した、独特の思慕が交錯していたのだろうと、評論子は思いました。
その点で、充分な佳作だったと、評論子は思います。
別作品『パストライブス…』とは、また違った地平にある作品として。
<映画のことば>
元々、私たちの住む世界は違うわ。
自分が何をしているのか分からない。
安心できるところもないわ。
母に電話で「大金を稼げる」と言ったの。
でも、私は無一文で、あるのは借金の山。
明日、自分の身に何が起きるか分からない。
とても怖いわ。
(追記)
レイキウが女性企業家として成功した陰には、おそらく、マッサージ店の常連客で、当時はすっかり(情婦として?)「大人の女と男との関係」になっていた極道のパウの資金があったたろうことも、想像に難(かた)くないところです。
しかし、シウクワンのと再会の前には、前記のとおり観光ガイドとして稼働していたということは、パウの亡き後は(=パウを後ろ楯とする資金が途絶えてからは)、彼女の企業も、一気に傾いてしまったということなのでしょう。
英会話学校のパートタイムとマックでのバイトのかけもちから身を起こし、シウクワンとの再会を果たすまでのレイキウは、起伏の少なくない、波乱の道を歩いてきていたのでしょう。
それだけに、シウクワンのと再会は、彼女にとっとも、ひとしおの感慨があったのだとも思います。
上記の佳作の評価には、その点も加味していることを、付け加えておきたいと思います。
(追記)
カセットテープとレコード全盛の時代。
レンタル店の商品は、DVDではなく、VHSのビデオテープ。
本作の設定から、自分が生きてきた時間の長さを実感として感じとったのは、評論子と同じ世代のレビューなら誰もが抱く感慨として、独り評論子だけのものではなかったことと思います。
(追記)
本作は、卒爾(そつじ)ながらレビュアーのお名前を失念してしまったのですけれども…。
どなただったか、別作品『パストライブス 再会』に寄せられたレビュアーさんのレビューに食指を動かされて鑑賞したものでした。
別作品『パストライブス…』は、20年余を経た、かつての男の子と女の子との淡い恋愛感情の切なさを見事に活写した一本でしたし、本作は、上記のとおり「必ずしも恋愛感情には留まらない、この大人同士の二人の間に独特な思慕」の美しさを描ききった作品として、また別作品『パストライブス…』とは違った男女の関係性を浮き彫りにしていたのではないかと、評論子は思いました。
いずれにしても、本作は、当サイトのレビューを読んでいなければ観なかった一本。
自分で佳作を引き当てるのも、むろん映画の楽しみ方なのですけれども。
他方では、こうして、教えてもらって佳作に巡り合うというのも、また映画ファンとしての楽しみ…幸せのひとつなのではないかとも、思います。
ハンドルネームを失念してしまった「名無しの権兵衛」のレビュアーさんにこのレビューを捧げて、気持ちばかりのお礼に代えたいと思います。
ロマンチック
中国語の勉強のために鑑賞。(ほとんど広東語だったから、字幕をガン見)
80年代後半から90年代の雰囲気が味わえる。
物語自体は、前にもあったような、オチも見えているんだけど、そのオチを観るために最後まで見入ってしまう。
この作品には、そうさせる演出に魅力があると思う。結局泣けたし。
冒頭で明らかな伏線があったのに、すっかり忘れていて、最後に回収された時、
「あ〜!それがあったんだったー!」と悔しかった。笑
割と王道なストーリーなのに、令和に観ると特に、よりロマンチックに感じる。
携帯もない時代、やっとキャッシュカードが普及してきた時代で、出会い、別れ、再会。
今なら簡単でも、昔はありえなかったことが、物語を豊かにしていく。
そんな恋人たちの姿を残せる映画って、やっぱりいいなと改めて感じた。
個人的に好きだったのは、マフィアのボスが、ミッキーマウスの刺青を入れてたところ。
極端に悪い人が出てこなかったのも、私は好きだった。
愛は強し。
香港の香り
運命的な恋人たちの出会いと再会のオーソドックスな香港映画
中国本土に婚約者を残し、香港に職探しに来た青年が、マクドナルドで出会った女性と愛し合いながら別れ、結局は流れ流れてアメリカで再会するハッピーエンドのラブストーリー。祖国を捨て自分で切り開く人生の成功を望む中国人の或る種の強かさが、この物語に僅かながら現実味を感じさせる。一度街中で女性が青年を見かけ追い掛けるシーンがクライマックスになっている。古典的な映画技法の嫌味なさ。ストーリーに合った青年役の個性が薄い男優と、現代的な働く女性像を表現した相手役の女優の上手さ。このふたりのキャスティングはいい。ラスト、プロローグの香港のターミナル駅に到着したシーンの再現で、実はこの恋人たちが背中合わせで同じ列車にいた運命的偶然をオチにする演出はご愛嬌で、映画的価値は薄い。中国本土に残っていては、男女の出会いが出来ないから新天地を求めるのかと、祖国愛が生まれにくい中国の実状が垣間見える。
2000年 5月10日
中国共産党による民主主義弾圧が明確に歴史に残された2020年。このような香港映画も姿を消すことになるとは、当時は想像しなかった。
ふうむ…
離れても別れても
女はサラッとし、男はケロッとしているがため、くっつくまで非常に時間がかかった。
大陸を出て香港で出会い別れて離れて海を越えて、それでも神様だかなんだかは何が何でもこの2人が結ばれるように仕向けたのです。
いやいや戻れよwとかツッコミどころは多かったけど、懐かしい古き良き香港の風景、2人の無邪気な関係、さすがの包容力エリック・ツァン、クリストファー・ドイルの刹那的生き方、魅力満載の一作でありました。
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