ライトスタッフのレビュー・感想・評価
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「ドリーム」と併せて観ておきたい一本!
完全版だと200分近い上映時間となるこの歴史的な偉業を描いた超大作。単なるアメリカ万歳ではなく、人類初の宇宙飛行士となるべくしのぎを削った7人の姿を描くと同時に、冒頭やクライマックスのかなりの部分を“そこには加わらなかったもう一人の男”を描き出すために力を注ぐ。宇宙ではなく、あくまで地球上で音速の壁に挑戦し続ける彼、イエガーの存在感が、何か言いようのない余韻を残し、本作を唯一無二のものへと至らしめているのは言うまでもない。この部分に香る、”最後のカウボーイ”ともいうべき郷愁は、本作が伝統的なアメリカ映画の系譜を継ぐものであることの証でもある思う。
ちなみにこの宇宙開発の歴史の流れはちょうど『ドリーム』とも重なるし、“これまで陽の目を浴びなかった者たち”に光をあてるというテーマ性も共通するものがある。両作を併せて観ることで、この時代をめぐる光と影を多角的に深く理解することにつながるはずだ。
やっぱり面白い、メインテーマ曲に胸熱
1947年、チャック・イェーガーは人類初のマッハを超えた。その後、宇宙開発競争でソ連に遅れをとったアメリカは、マーキュリー計画で七人の宇宙飛行士を養成。計画に参加できなかったイェーガーと宇宙飛行士の物語。
久しぶりで、何度目かの鑑賞。やっぱり面白いです。冒頭のマッハ超えのシーンは、「トップガンマーヴェリック」を思い出しました。オマージュなのかな。チャック・イェーガーの名前は、マンガ「キリン」でおまじないのように語られていました。
ユーモラスなところがいくつかあります。宇宙飛行士の候補に、帰還時に着水するからサーファーが、バランス感覚が優れているから曲芸師が、スピードと炎に慣れていてヘルメットを持っているのでレーサーが、と提案されます。ふざけているのか、本当だったのだろうか。あれは何だったのか疑問が残るホタルは、尿だそうです。
ジョン・グレンの家族と友情のシーンがいい。彼らの勇気を称えるメインテーマが名曲、すばらしい。
サム・シェパードが演じるチャック・イェーガー
スコット・グレンが演じるアラン・シェパード
エド・ハリスが演じるジョン・グレン
チャールズ・フランクが演じるスコット・カーペンター
スコット・ポーリンが演じるディーク・スレイトン
配役は名前で遊んでたのか。
劇中でガス・グリソムのその後が語られます。他、チャック・イェーガーは、ウィスキーを勧める老人として本人が出演。アラン・シェパードは、月を歩いた最高齢の人に。ジョン・グレンは、上院議員になったあと77歳で再び宇宙に。劇中で七人の中で最後に宇宙へ行ったのがゴードン・クーパーでしたが、実際はディーク・スレイトンで、しかもアポロ計画よりも後。
テストパイロットと宇宙飛行士、行く道は異なったが、お互いに交わすリスペクトに…
もう約40年も昔のことになるが、
強く記憶に残っていた思い出の作品の一つ。
その後、機会は失われたが、
NHKの放映を機にようやく再鑑賞出来た。
さて、この映画は題名の通り、
“正しい資質”
についてと語られる作品だが、
私にとっては人間の“信念と誇り”
についての印象が深い。
機械は人間が操る物、との“信念”の
テストパイロットと、
半ば操られながらも人間の“誇り”
を守り通そうとする宇宙飛行士達の話で、
いずれにしても正に“ライトスタッフ”的面々
の、その仲間意識と、
行く道が異なったとしても、
お互いに交わすリスペクトが感動的だ。
ただ今回、作為的に感じたのが、
人間とサルのどちらを先にというシーン。
これは新型ロケットを打ち上げる際に
衛星を搭載しないことと同じことで、
サル君には申し訳ないが、
ロケットの精度が人間ではまだまだ不安が
あったからこその“サル君を代用して”
だったと思うのだが、
それを乗員なのか飛行士なのかとの
観点に絡めて、
サルと人間を競争相手として表現したのは、
いかにもエンターテインメント的に
偏り過ぎていたように感じたのだが、
実際はどうだったのだろうか。
しかし、そんなことも些細なことで、
ゴードの記者会見で、
記者の余計な質問が入らなければ、
最高のパイロットとして語ろうとしたのは
“イエーガー”だったと思うのだが、
そのイエーガーも
宇宙飛行士達への想いからか、
新型機のテスト飛行では
“彼らの高み”まで行ってみたくてとの事故、
といったように、
お互いのリスペクトに集約させた作風には
感動を覚えるばかりだった。
尚、立花隆の著書「宇宙からの帰還」では、
アメリカ初の宇宙飛行士として
有名人となった人間関係を元に、
政治家へ転身したジョン・グレン、
投資で成功するアラン・シェパード、
また、会社役員として招かれる
ウォルター・シラー、
の3人のその後の人生が紹介されています。
男のロマンに溢れた名画ですね
アポロ13公開時にライトスタッフも見ておいた方が良いと聞き、バイト先のビデオ屋でVHS2本組を借りて一発でハマった映画であります
ソフトも絶版状態の中、中古LDを買った(時代を感じますね)ら4:3の画角で、それでもマイフェイバリットで見まくってたのが
ワイドスクリーン版が出ると言うので購入し直したら記録映像風の再現シーンからカラーになった瞬間、スクリーンが拡がる作りなんですよね
画面一杯に映り込むX-1の映像に見慣れた映画が別物に見えて涙した思い出
この映画を見たら次にヒドゥンフィギュアス、トムハンクスのTVシリーズ「人類、月に立つ」、間に月のひつじ、アポロ13を見れば壮大な宇宙開発史サーガが堪能出来るはずです
宇宙飛行士の野口聡一さんの人生を決めたのもこの映画を見たから、とJAXAのブログに書かれてますね。
ちなみに、イェーガーが大卒で無いので宇宙飛行士の選抜対象から外される描写が有りますが
実際にはゼロから有人宇宙飛行船を作るに辺り航空工学系の大学を出た設計、評価の出来る人と言うのが宇宙飛行士の選考基準なのでなんでそれをちゃんと描写しなかったのだろう?とは思います
時代に流されない、孤高のイエーガー
Pictures on the wall ライトスタッフは正しい資質
2月24日(月)
「死に損なった男」を観て帰宅するとNHK-BSで「ライトスタッフ」をやっていた。
既に後半だったが観てしまった。
宇宙飛行士になれなかったチャック・イエーガー(サム・シェパード)の意地、ジョンソン副大統領さえも跳ね返す7人の宇宙飛行士達(とその妻達)の友情、連帯感と団結力。
当時最高のVFX、カレブ・デシャネルのカメラとビル・コンティの音楽が最高だ。何度観ても心に刺さる。
1984年、最初に日本で公開されたのは33分もカットされた2時間40分の短縮版だった。
ワーナーブラザース米国本社の指示だったという。アカデミー賞編集賞受賞作を切ったんだから何をか言わんや。
F104の機体をを眺めているイエーガーからF104のアフターバーナーに移動したカメラは宇宙飛行士達のパーティーへのトンネルに続く。そしてパーティー会場でのダンスに宇宙飛行士達が上を見上げた時、上空からイエーガーのF104が落下してくるという見事な編集。
本作中に2度しか出てこない「ライトスタッフ」というセリフがカットされている(ここにライトスタッフを持った連中がいるんだとあの壁に写真が貼られた酒場に入って行くシーン)という信じられない短縮カット版。
もちろん最初に劇場で観たのは日本公開短縮版であったが、その後レーザーディスク(DVDの時代ではありません)を入手してノーカット版を観た。何度も観た。その度に心に刺さった。
本作のラストでゴードン・クーパー(デニス・クエイド)が地球周回記録を作ってマーキュリー計画は終了する。
宇宙飛行士ガス・グリソムは次のアポロ計画で事故で死んだと紹介されるが、人類の宇宙への挑戦の歴史は「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」へと続いて行くのである。
おまけ
小学生の頃、旭化成のミタスのプラスチック容器はジェミニ宇宙船のデザインだったから欲しかったのだが、我が家は味の素のガラス瓶(母はずっと味の素でした)。
今観ると思ったよりキャストがすごい
常に命の危険が伴うチャレンジ精神
男に生まれたかったと本気で羨んだ
「正しい資質」みたいな意味の言葉か。無骨で、ただ鈍感なだけで、ちっとも特別な才能があるとは思えない。究極のやせ我慢の世界。そんなテストパイロットたちが、次に目指す地平は宇宙。
ガガーリンが初めて宇宙に行き、国家プロジェクトとしてアメリカが本気で宇宙を目指した時代に、華やかで、死と隣り合わせの、最先端の科学を搭載したマシーンを操るロデオライダーたちがいた。それをゆったりとしたテンポで、爽快に描いた快作。ある女性が「私も男に生まれたかった」と本気で悔しがっていたのが印象的だった。この映画を見たら、そんな気分になるらしい。
願わくば、クリストファー・ノーラン監督で、再映画化してほしいものだ。ある意味、『インターステラー』は、この映画のオマージュともいえるかと思う。主人公の経歴が元テストパイロットだったし。
正しい資質
1984年公開時に当時の日比谷スカラ座で初鑑賞。
人類史上、初めて音速を超えた男。孤高のパイロット。チャック・イエーガー そのストイックかつ漢の美学に痺れた。カッケー❗️サム・シェパード‼️
アメリカ初の宇宙飛行士選抜過程はとってもユニーク。その選抜は本当に正しいものだったのか。
当時はアクション映画部門だったが、実話を忠実に再現したジャーナル系出身監督のおかげで今やアメリカ映画史にその名が残る高評価作品。
特撮はミニチュア撮影が主体。でもこれがリアル
に出来ている。◎撮影が素晴らしい。◎記録ではない本当に実機を飛ばしている。実機撮影を上手く織り交ぜながら音速の世界感を表現している。
あと音楽がとても素晴らしい。◎テーマ曲を聴くとチャックの肋骨を折ながら操縦、マッハ超え、メーター振り切れの場面が今でも目に浮かぶ!
⭐️4
実際の宇宙飛行士たちも魅了した
実話をもとにしたストーリー。
有人宇宙飛行計画、マーキュリーで旅立った宇宙飛行士たちの物語。
「THE MOON」でインタビューに答えていた、月に行った宇宙飛行士が子どものころに‘ライトスタッフ’で夢中になったものさ…と言ってたので早速チェックです。
全くの未知のことなせいなのか楽天主義なのか、計画が失敗して死ぬかもしれないということからの悲壮な覚悟。なんてのはほとんどありません。あるいは困難を苦にせず乗り越えることができるもの=ライトスタッフ(正しい資質)ともいえるのかもしれない。
平行して空軍のトップパイロットの物語も。彼は実力がありながら大卒でないせいで候補から外されてしまった。これは運やチャンスをつかむかどうかもライトスタッフに関わるんだ、ということなのかな?
ともかく宇宙でも空でも限界へ挑戦していく男たちはかっこいいです。
丹念に追ってるせいで、ちと長い。
宇宙競争は、血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ…。 映画で学ぼう宇宙開発史。
米国初の有人宇宙飛行計画、通称「マーキュリー計画」に参加した7人の宇宙飛行士たちと、最速のテストパイロットであるチャック・イェーガーの姿を通して、パイロットの持つ「正しい資質」を描き出す宇宙開発史劇。
7人の宇宙飛行士=「マーキュリー・セブン」のリーダー、ジョン・グレンを演じるのは『クリープショー』の、名優エド・ハリス。
宇宙飛行士をリクルートするNASAのエージェントの一人を演じているのは『狼よさらば』『アニー・ホール』のジェフ・ゴールドブラム。
第56回 アカデミー賞において、編集賞/作曲賞/音響賞/音響編集賞を受賞!✨✨✨
第27回 ブルーリボン賞において、外国映画賞を受賞!
1957年、ロシアは世界初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功。アメリカは「やべえよやべえよ…。宇宙から核の雨が降り注いじゃうよ…。」とビビり散らかした。これが俗に言う「スプートニク・ショック」。
米は露に対抗する為、宇宙開発を急ぐ。1958年に航空宇宙局(NASA)を設立し、世界初の有人宇宙飛行を目指した。58年〜63年に行われたこの宇宙開発計画こそが「マーキュリー計画」。これがその後数々の技術革新を起こした「ジェミニ計画」、そして世界初の月面着陸を達成した「アポロ計画」へと繋がっていく訳ですな🤔
本作はこのマーキュリー計画に参加した米国初の宇宙飛行士たち「マーキュリー・セブン」の物語。
それと並行して、世界で初めて音速を超えた人間、チャック・イェーガーの物語を描くことにより、真のパイロットのみが持つという「正しい資質」とは何かということを観客に提示する。…チャック・イェーガーって、名前カッコよすぎやろ〜!
上手いのはこの「正しい資質」が何なのかというのを、セリフなどで一切説明しないこと。勇気や使命感といったものを超えた、軽々しく言語化してはならないものを、セリフではなくキャラクターの行動や表情で観客に伝えきっている。
「正しい資質」に溢れるパイロットたちの姿は皆魅力的だが、特に好きなのはマーキュリー・セブンのリーダー、ジョン・グレン!「副大統領だろうが、キミが会いたくないのなら会う必要はない」と奥さんに告げる場面は、思い出すだけで目頭が熱くなります😢
鑑賞前のイメージでは、『トップガン』(1986)のようにU・S・A!U・S ・ A!的なノリの良い米国讃歌かと思っていましたが、実際はそれとは真逆。米ソ間の宇宙開発競争がいかにパイロットたちの誇りや尊敬、そして何より命を軽視していたのかがたっぷりコッテリと描かれる。
意地になって無謀な計画を進める政治家や、ただただ猿のように騒ぎ立てるマスコミの姿を露悪的に映し出し、それらとただのマスコットであることを自覚しながらも粛々と命懸けのミッションに取り組むアストロノーツたちの姿とを対比させることで、「正しい資質」とは何かを浮き彫りにする。非常にウェルメイドな作劇だと思います。
ランタイムは何と脅威の190分オーバー!
あまりにも長すぎるということで日本公開時は160分にまでカットされたらしいがそれでも長いよね💦
何たって、DVDがアナログレコードみたいに両面仕様ですからね。こんなん初めて見た。
3時間以上の映画って個人的にはNGなんだけど、この映画に関しては、まぁこのくらいのランタイムは必要だよね〜、という感じがしてあまり気にならなかった。
むしろ、アメリカ宇宙開発の黎明期をよくぞ3時間でまとめたなと拍手したいところであります👏
とはいえ、バカ長いランタイムの上、派手さのカケラもない作風なので流石にダレる。宇宙開発史に興味のない自分のような人間にとっては、ぶっちゃけ退屈な映画である。
あと、チャック・イェーガーのパートが気になる…。
マッハ1超えを目指すイェーガーの勇姿から映画が始まるので、もっと彼が映画の中心になっていくのかと思いきや、実際はかなりの脇役。
マスコットであることを自覚しつつ時代の寵児となるアストロノーツと、誰からも見向きもされなくとも最速最高度を目指し続ける戦闘機乗り。この対称的な二者の姿から「正しい資質」とは何なのかを読み解かせる、という意図は分かるし、この映画からチャック・イェーガーを抜いたら味気ないものになっちゃうというのもわかる。でも、それならもう少し出番を増やすとか、彼のエピソードに厚みを持たせるとか、傲岸不遜な青年ゴードンとのやり取りを追加するとか、もう一手何かが欲しかった。イェーガーがちょい映画から浮いちゃってるのよね😮💨
それと野暮なツッコミをしちゃうと、出撃許可のないままテスト機を発進させて、あまつさえそれをぶっ壊しちゃうというのは「正しい資質」といえるのだろうか…?
面白かったかつまらなかったかは置いといて、映画史的に有名な作品だし、宇宙開発史も学べたしで、観て損は無かったとは思う。
アポロ計画を描いたデイミアン・チャゼル監督の『ファースト・マン』(2018)とセットで観るとより楽しめるかも。ガスとかイェーガーも出てくるしね。
余談だが、『トップガン マーヴェリック』(2022)の冒頭シーンはまんまこの映画のパロディだったということが発覚!『トップガン』にお偉いさんとしてエド・ハリスが出演していたのはそういうことだったのね。噂には聞いていたけどほんとにそのまんまで笑っちゃったよ🤣
ということで、宇宙ファンや『トップガン』ファンにはオススメな一作であります。
ライトスタッフというタイトルに考えさせられる傑作ドラマ!!
アメリカとソ連の宇宙開発競争が激化する'40~'50年代を背景にアメリカ空軍の戦闘機開発に従事したテストパイロットと有人宇宙飛行計画"マーキュリー計画"に従事した、7人の宇宙飛行士の生きざまを描く実話ベースで見応え満点の傑作ドラマです
名優達の演技は当たり前のこと、全編に渡っての映像・構図が素晴らしい
前半に描かれるサム・シェパードさん演じるチャックイエーガーが戦闘機でマッハを越えていくところは腹の底までずっしりと響く重低音、そして耳をつんざく戦闘機のド迫力映像ですごいです
昨年 多くの人が「トップガン:マーヴェリック」の戦闘機でのライブ映像に驚き感動したのが記憶に新しいですが、40年ぐらい前の作品でひけをとらない迫力が味わえるところが感動ものです
だからトム・クルーズさんもライブにこだわったんだなと納得しました
さらに音楽もすごく良くて印象的
作曲は「ロッキー」シリーズで映画史上に残る名曲を残すビル・コンティさんのもの、全編に渡って心に染み入るいい音楽が流れます
"ライトスタッフ"、日本語で言うと"正しい資質"や"適任"という意味ですが、劇中 以下に記するいろんな人々が登場しこのタイトルの意味を考えさせられました
・チャック・イェーガーは人類初の音速に達した優秀なテストパイロットなのに大卒じゃないというだけで宇宙飛行士の候補にもならなかった、って正しい判断?
・宇宙飛行士の旦那が命を懸け生還したのに、大統領との慰労ディナーに招待されないことを旦那に当たり散らす嫁
・副大統領と言えば誰もが言うことを聞いてくれると勘違いしているオジサン
パイロットや宇宙飛行士だけでなく、様々な意味での"資質"を問う、何度観てもいい、お気に入りの名作です
ガムはあるか? …後で返すから。
午前十時の映画祭12にて。
改めて観賞してみて、36〜37年前の初観賞時よりもコミカルだと感じたので、自分も大人になったな〜と。
死の危険を知りながら挑戦する男たちが、たまらなく格好いい❗
リアリティーに程好くファンタジーを織り混ぜて男のロマンを描いている。
そして、サイドストーリーは彼らに寄り添う妻たちの戦い。男のロマンは女たちによって支えられていた。
ビル・コンティによるオリジナルテーマ曲は、今やスタンダードとなってテレビのバラエティや報道番組のBGMによく用いられている。七人のアストロノーツが宇宙服を身にまとって発射場に向かうスローモーションに、音楽がシンクロして最高に格好いい。幾つかの映画でトレースされている。
そのオリジナルに加え、ホルストの組曲をアレンジしたと思われる勇壮な音楽が、ロケット発射シーンを演出している。
米西部の砂漠地帯に位置するエドワーズ空軍基地を舞台に物語は開巻する。
西部劇さながらに愛馬を駆って草原を往く男と、ジェットエンジンが炎を吐くテスト機のコントラストの妙。
男は、世界で初めて音速を越えたパイロット=チャック・イェーガー。実在の人物をサム・シェパードがニヒルに演じている。
町で唯一(だと思う)の酒場のカウンターで、初対面のように妻(バーバラ・ハーシー)を口説くのが粋だ。
イェーガーが音速を越えた後、その記録を更新したライバルが酒場でイェーガーの妻に目配せをする。彼女はそれに気づいて夫をダンスに誘う。男を見上げながら踊る女のシルエットのなんと美しいことか。私は背が低いので本当に憧れる。
躍り終えたイェーガーは後ろ姿でライバルに酒のグラスを振って見せる。
どこまで格好いいのか!
第二次世界大戦の直後、日本がGHQの支配下で復興に取りかかったばかりの頃、アメリカはジェット機で音の壁に挑んでいたという事実。
更には、1957年にはソ連が人工衛星の打ち上げに成功し、翌年にはアメリカにNASAが設立されている。
プロペラ機の太平洋戦争から15年あまりで米ソは人間を成層圏の外に送り出しているのだ。
このように、爆発的なスピードで進歩したことがこの映画ではよく分かる。
連合国だとはいえ、アメリカは共産主義国ソ連の技術発展に警戒感をもっていた。覇権争いにおいてもソ連に遅れを取ることは許されない。
宇宙飛行士を選定するにあたって曲芸師たちが候補に上がったのが事実かどうかは知らないが、大統領からテストパイロットから選べと指示された閣僚たちが慌てふためくのが可笑しい。テストパイロットほど扱いにくい人種はいないというのが共通認識だったのだ。
役人たちは、テストパイロットの人選基準に「大卒」条件を加える苦肉の策で、比較的物分かりの良い人間を集めようとすのだから、これも可笑しい。
マーキュリー計画が動き出すと、映画の舞台はケープカナベラルに移る。
エドワーズに残ったイェーガーは七人のアストロノーツ(マーキュリー・セブン)を遠くから見守る役回りとなる。
花形となったマーキュリー・セブンをやっかみ半分で茶化すエドワーズの連中に反して、イェーガーは毅然と彼らに敬意を表するのだった。
マーキュリー・セブンの主要キャラクターは、世界一のパイロットを自負するゴードン・クーパー(デニス・クエイド)とガス・グリソム(フレッド・ウォード)のエドワーズ組と、海軍のテストパイロット組のジョン・グレン(エド・ハリス)とアラン・シェパード(スコット・グレン)の4人だ。
それぞれが個性的な上に、妻たちもキャラクターが立っていて、脚本が上手い。
自意識の高い彼らがライバルとして対立するのかと思えば、互いにリスペクトしながら切磋琢磨する。
彼らの連帯感に胸が熱くなる。
終盤の歓迎レセプション場面で、唯一宇宙に飛び立っていないクーパーが、インタビューに応えてエドワーズのテストパイロットたちを讃えようとするが、記者たちの矢継ぎ早の質問に遮られて言えない。
あの酒場の壁に飾られたパイロットたちの写真の意味は、地元の人間しか知らない。
世間に知られず勇敢に散っていったテストパイロットたち、そして今日もどこかでマシンの限界に挑戦しているテストパイロットたち、全てのテストパイロットたちこそ最高のパイロットたちだと言いたかったが、諦めて言い直す。「最高のパイロットは目の前にいる」…いつも妻に言い続けた台詞だ。
愉快で、粋で、熱い。
あの酒場が火事て焼け落ちたことをクーパーは知っていただろうか。
そして、この直後クーパーは、単独で宇宙を飛んだ最後の宇宙飛行士となる。
余談だが、
レセプション会場のステージで全裸に羽をまとって踊っていたサリー・ランドは、実在したバーレスクのダンサーだ。
日本公開版ではカットされていたが、公開数年後に購入したレーザーディスク版で確認できた。
遙かなるアメリカ宇宙開拓史
3時間超の長尺にもかかわらず、とても見応えのある作品でした。アメリカの宇宙戦略の黎明期をマッハの壁の突破から、有人ロケット発射までを非常に丁寧に描いてあり、これはもはや西部開拓史ならぬ宇宙開拓史で、七人の宇宙飛行士はいわばカウボーイですね。彼らが強い友情と絆で結ばれて命がけのミッションに挑み、狂乱するマスコミやソ連への競争意識を剥き出す政府から、仲間や家族を守る姿には感銘を受けます。また、飛行士には選ばれなかった史上初の音速パイロットの飛行士としての矜持もカッコいいです。役者では、若い時からいぶし銀の魅力のサム・シェパード、スコット・グレン、エド・ハリスが素晴らしいです。セリフは少ないけど、エイリアンシリーズのランス・ヘンリクセン、ザ ・フライのジェフ・ゴールドブラムも参加していました。
夢と浪漫のその先に
午前十時の映画祭にて、オリジナル全長版を初めて観ました。トイレがち...
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