劇場公開日 1984年9月8日

「ガムはあるか? …後で返すから。」ライトスタッフ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ガムはあるか? …後で返すから。

2022年7月7日
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鑑賞方法:映画館

午前十時の映画祭12にて。
改めて観賞してみて、36〜37年前の初観賞時よりもコミカルだと感じたので、自分も大人になったな〜と。

死の危険を知りながら挑戦する男たちが、たまらなく格好いい❗
リアリティーに程好くファンタジーを織り混ぜて男のロマンを描いている。
そして、サイドストーリーは彼らに寄り添う妻たちの戦い。男のロマンは女たちによって支えられていた。

ビル・コンティによるオリジナルテーマ曲は、今やスタンダードとなってテレビのバラエティや報道番組のBGMによく用いられている。七人のアストロノーツが宇宙服を身にまとって発射場に向かうスローモーションに、音楽がシンクロして最高に格好いい。幾つかの映画でトレースされている。
そのオリジナルに加え、ホルストの組曲をアレンジしたと思われる勇壮な音楽が、ロケット発射シーンを演出している。

米西部の砂漠地帯に位置するエドワーズ空軍基地を舞台に物語は開巻する。
西部劇さながらに愛馬を駆って草原を往く男と、ジェットエンジンが炎を吐くテスト機のコントラストの妙。
男は、世界で初めて音速を越えたパイロット=チャック・イェーガー。実在の人物をサム・シェパードがニヒルに演じている。
町で唯一(だと思う)の酒場のカウンターで、初対面のように妻(バーバラ・ハーシー)を口説くのが粋だ。
イェーガーが音速を越えた後、その記録を更新したライバルが酒場でイェーガーの妻に目配せをする。彼女はそれに気づいて夫をダンスに誘う。男を見上げながら踊る女のシルエットのなんと美しいことか。私は背が低いので本当に憧れる。
躍り終えたイェーガーは後ろ姿でライバルに酒のグラスを振って見せる。
どこまで格好いいのか!

第二次世界大戦の直後、日本がGHQの支配下で復興に取りかかったばかりの頃、アメリカはジェット機で音の壁に挑んでいたという事実。
更には、1957年にはソ連が人工衛星の打ち上げに成功し、翌年にはアメリカにNASAが設立されている。
プロペラ機の太平洋戦争から15年あまりで米ソは人間を成層圏の外に送り出しているのだ。
このように、爆発的なスピードで進歩したことがこの映画ではよく分かる。

連合国だとはいえ、アメリカは共産主義国ソ連の技術発展に警戒感をもっていた。覇権争いにおいてもソ連に遅れを取ることは許されない。
宇宙飛行士を選定するにあたって曲芸師たちが候補に上がったのが事実かどうかは知らないが、大統領からテストパイロットから選べと指示された閣僚たちが慌てふためくのが可笑しい。テストパイロットほど扱いにくい人種はいないというのが共通認識だったのだ。
役人たちは、テストパイロットの人選基準に「大卒」条件を加える苦肉の策で、比較的物分かりの良い人間を集めようとすのだから、これも可笑しい。

マーキュリー計画が動き出すと、映画の舞台はケープカナベラルに移る。
エドワーズに残ったイェーガーは七人のアストロノーツ(マーキュリー・セブン)を遠くから見守る役回りとなる。
花形となったマーキュリー・セブンをやっかみ半分で茶化すエドワーズの連中に反して、イェーガーは毅然と彼らに敬意を表するのだった。
マーキュリー・セブンの主要キャラクターは、世界一のパイロットを自負するゴードン・クーパー(デニス・クエイド)とガス・グリソム(フレッド・ウォード)のエドワーズ組と、海軍のテストパイロット組のジョン・グレン(エド・ハリス)とアラン・シェパード(スコット・グレン)の4人だ。
それぞれが個性的な上に、妻たちもキャラクターが立っていて、脚本が上手い。
自意識の高い彼らがライバルとして対立するのかと思えば、互いにリスペクトしながら切磋琢磨する。
彼らの連帯感に胸が熱くなる。

終盤の歓迎レセプション場面で、唯一宇宙に飛び立っていないクーパーが、インタビューに応えてエドワーズのテストパイロットたちを讃えようとするが、記者たちの矢継ぎ早の質問に遮られて言えない。
あの酒場の壁に飾られたパイロットたちの写真の意味は、地元の人間しか知らない。
世間に知られず勇敢に散っていったテストパイロットたち、そして今日もどこかでマシンの限界に挑戦しているテストパイロットたち、全てのテストパイロットたちこそ最高のパイロットたちだと言いたかったが、諦めて言い直す。「最高のパイロットは目の前にいる」…いつも妻に言い続けた台詞だ。
愉快で、粋で、熱い。
あの酒場が火事て焼け落ちたことをクーパーは知っていただろうか。
そして、この直後クーパーは、単独で宇宙を飛んだ最後の宇宙飛行士となる。

余談だが、
レセプション会場のステージで全裸に羽をまとって踊っていたサリー・ランドは、実在したバーレスクのダンサーだ。
日本公開版ではカットされていたが、公開数年後に購入したレーザーディスク版で確認できた。

kazz
たなかなかなかさんのコメント
2023年2月21日

kazzさん、コメントありがとうございます♪

男のロマン全部乗せみたいな映画でしたね!
ただ、静かに月を見上げるイェーガーの姿が印象的です。

たなかなかなか