「雰囲気で押し切る佳作」欲望の翼 kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
雰囲気で押し切る佳作
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緑がかったというか、青みがかった映像がなんとも印象に残ります。終始薄暗いため映像美という感じではないと思いましたが、雰囲気がめちゃめちゃあります。なぜ、あれほどの湿度が伝わってくるのか。雨の音も妙に魅力的。カメラのカットもすべからく美しいです。BGMも完璧。映像・音楽・カメラワークと非の打ち所がない印象です。さすがはウォン・カーウァイ。
これだけ映画的にムードを作り出せてしまうと、ストーリーがイマイチでも持って行ける力があるな、と感じます。
つまり、そこそこ面白かったのですがストーリーは好みではなかったです。なんかキャラ頼みって感じでありながら、キャラを好きになれなかった。
母親に捨てられ、愛を知らず彷徨って生きざるを得ないヨディが、彷徨い死んでいく姿を見守る話で、変化もなく救いもなかったです。ヨディの悲しみに共感したり萌えたりすれば一気に名作として捉えることが可能でしょうが、個人的にはフーンって感じで終わってしまった。正直、悲しみは伝わって来たのですが、だからなんだ、って感じでした。暴力的でウザいヨディにどこかムカついていたのだと思います。異性ではないのでキザな台詞にも特に思うことはないですし。
警官役がカッコいい、売り子のスーが綺麗と感じたため、この2人の切ないやり取りは割と好きでした。
あと、1990年の映画を現在から観た未来人的立場から考えると、本作は香港の中国への返還直前の不安とか焦りみたいな空気が反映されているのかもしれないな、と感じました。アメリカンニューシネマ的救いのなさは、数年後は共産圏になっちまうのか〜という諦念みたいなものが背後に潜んでいるのかもしれません。
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