「良き時代VS欲望むき出し?」欲望という名の電車 parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
良き時代VS欲望むき出し?
これも30年位前に見て以来の視聴。名戯曲ということで、少し期待をしてみたが、あまりピンとこなかった。マーロン・ブランドとビビアン・リー、その周囲の人たちの演技は、素晴らしいと思って見ていたが、ストーリーの魅力が今一つわからない。セリフは、戯曲らしく修辞が多いが、上流階級の人たちが使っていたような気取ったセリフが多かった。ブランチは、上流階級の大きな農園で育って、(南北戦争で負けて?)夫は自殺。農場を切り売りしながら、父母に死なれて没落。身持ちを崩して、オリオールで生きるために手当たり次第に男を誘惑して娼婦に成り下がっていたようだ。古き上流階級の思い出にすがって、今でもその夢の生きたいと思っている。スタンリーは、肉体労働者で、粗野で暴力的。今でいうDV夫。アメリカ的なむき出しの欲望を体現しているかのよう。スタンリーが、ブランチの過去を暴いて、親友のミッチが誘惑されるのを阻止し、最後にはブランチをレイプし、ブランチは精神に異常をきたす。ビビアン・リーは「風とともに去りぬ」で、文字通り南部の大農場の娘を演じ、男を成り上がりの道具として扱い、南北戦争をきっかけに没落に転じていく。
その後日談ともとれる、この役。しかも、躁鬱病で苦しんでいたというから、文字通り自分の体験を糧に演じたということか。
この映画の肝だが、男の欲望=何とかして女をものにしたいという欲求、女の欲望=男から言い寄らせて、最大限貢がせるという欲求、のぶつかり合いと見えなくもない。そうなると、ブランチが異常をきたすことの説明がつかない。
アメリカが世界第一の工業国となり、北部中心に工業生産で豊かになり、ヨーロッパの古きよき上流階級や騎士道的な精神が死に絶え、労働者階級の、より物質的、直接的な欲望が前面に出るようになったということを描きたかったのか?上流階級を覆っていた虚栄や偽善が、新しい文化によって取って変わられたということなのか?個人的に見れば、ブランチが可哀そうとの見方もできるが、有名な戯曲なので、もっと象徴的な意味が隠れていると思う。
ビビアン・リーが、虚栄を張って、思わせぶりな態度を取ったり、老いを恐れる様、次第に精神に異常をきたしていく演技は、なかなかだった。
しかし、物語自体の魅力が自分にはわからなかったので☆3つ。