劇場公開日 1952年5月22日

「未完成ゆえに名作」欲望という名の電車 鯖さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0未完成ゆえに名作

2019年2月21日
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もしも 倫理観や道徳観に縛られていなければ、作品そのものは完成していたのではないでしょうか。

しかし、それを抜きにしてしまったなら、この映画は名作と言われなかったと思います。

つまり、この映画においてこの関係は 完全にトレードオフ。

暗喩やぼかしが入っていく事で、物語そのものが難解になるのであれば、入れない方が分かりやすくはなります。
それと引き換えに 品位 が落ちることは間違いないでしょう。

幸い 俳優陣の演技が本当に素晴らしいので、暗喩であっても キャラクターの心情や場面の状態で、なんとなく意味を掴むことは難しくはないと思います。
多少の難解さは、演技がその部分を補完してくれています。

ブランチのように真意が見え隠れする映画です。

私としては 完璧性よりも品位をとってくれた、当時の映画社会と観客に乾杯。
そこに甘えることができました。

しかし、この映画をどう楽しむか という部分については、 視聴者の感性や哲学に求められる部分があるので、勉強が楽しい と思えるようなスタンスで観ないと ハードルを感じてしまうかもしれません。

私はそういう見方が好きですから、かえって シンプルに楽しむべき映画を観るのは もしかして無粋な鑑賞をしているのではないかと不安になります。
ですから、こういう映画の方が楽だし 助かります。

タイトルがタイトルなので、明るい作風を求めて観る方はいらっしゃらないと思いますが。

鯖