劇場公開日 1952年5月22日

「正気と狂気の間とは?」欲望という名の電車 jarinkochieさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0正気と狂気の間とは?

2018年9月29日
Androidアプリから投稿

テネシー・ウィリアムズだから、楽しい話ではないが 俳優達の演技バトルが観れる
英国演劇界代表のヴィヴィアン・リーと ブロードウェイ初演三人組、そしてその他の脇の人達も凄い面構え、と迫力!
(こちらも、ブロードウェイ組か? 個人的には、二階のオバサンが好き)

ヴィヴィアンは当初、英国演劇界臭が漂い、 ブロードウェイ組の ド迫力との違和感を感じたが、話が進むにつれ、程よくブレンドされ、最後はリーとブランドの「闘い」のような、様相になって来る
ブランドのスタンレーは 素晴らしく、粗暴で動物的直観に優れた、性的魅力で むせかえる様な男になっている

ヴィヴィアンとブランドは 意外に仲が良かったらしい
彼女はブランチの様に 気取る人ではなかったし、「美貌」「知性」「名声」「オリビエ」等、何もかも 所有していた

何故、躁鬱になってしまったのだろうか
そして 何故、我々は彼女とブランチを重ねて しまうのだろう
ジョージ・キューカー監督は ヴィヴィアンの二重人格的魅力について述べていたが…

運命は 彼女に様々な贈物をしているが、大変な代償を払わせてもいる
ブランチは壊れてしまったが、躁鬱や肺結核を煩いながらも 彼女はもちこたえ、自死しなくてよかったと、つくづく思う

ヴィヴィアンの躁鬱の一因は、その気質もあるが 英国演劇界の神(オリビエ)との結婚が原因ではないかと 思う
神は 野太く、無神経なのだ

そして、アメリカ演劇界の神とも言える、ブランドとの共演、ブランチという難役を終えての、彼女と彼女の人生の疲弊を考えると胸が詰まる
(これは、栄光のはずなのに…)

その運動神経が、能力を破壊してしまった選手を見たことが ある
ヴィヴィアン・リーという女優も そういうタイプかもしれない
自らの美貌と病気治療を躊躇なく、かなぐり捨てて 役に挑んで行ったところが 凄い
そして その結果、自分に訪れるであろう 悲劇を、自覚しているようなところも怖い
ブランチは自己欺瞞で 崩壊していったが、彼女は上昇志向と挑戦で 疲弊していった
恵まれ過ぎていたため、保身という考えが無かったのだろう

しかし彼女は、この映画で、我々に ありとあらゆるものを見せてくれている
そして この作品が 一連のテネシー・ウィリアムズ物の中でも、特筆すべきものになったのは 彼女の力である

jarinkochie