欲望(1966)のレビュー・感想・評価
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アートだと思えば、まぁまぁ
若手人気写真家が主役のこの映画。ふと公園で撮った写真に死体が写り込んでいて…と、写真に狂わされていくサスペンスなのかと思いきや、シュールすぎるエンディングに…。難解だが、映像が写真のワンカットのようで、60年代のイギリスファッションを愉しむのも、この映画の見方の一つなのかな🤔
不条理世界を描いた名作だのとの触れ込みがDVDに書いてあったので,...
不条理世界を描いた名作だのとの触れ込みがDVDに書いてあったので,さぞやどうしようもない状況に置かれた主人公が大爆死するんだろうと思っていたら,全然別の方向だった.しかし優れた映画だった.主人公は写真家として成功しているし,ポストを欲しがる美女と性行為を楽しんでいるし,美術の収集にも余念がない.いくつかの不穏さは映し出されるけれど直接語られることもなく,ミステリのように進展した殺人事件についてもなすすべもなく終わってしまう.そして極めつけは最後のシーンで,何とは言えないけれどとてもしびれた.ボールを取りに行く演技をすることによって,空想の試合が現実のものになったのか.雑に解釈するなら,我々が現実だと思っていることも,空想の徒手空拳でしか過ぎないのであって殺人事件だとかいくつかのことは妄想でしかないとかそんなところだろうか.難解なシーンがいくつかあるけれど,構図やモノの特性を生かした映像美に魅せられて飽きることがなかった.
カメラを止めろ!
カメラは眼前の真実を切り取る。しかし切り取るという行為によって、切り取られた真実は延伸性を喪失する。こうなっていたかもしれない、という無数の可能性はあえなく途絶する。カメラの使い手は、あれほど渇望していたはずの真実にかえって首を絞められていることに気がつく。 いや、気がつくのならまだいいほうだ。ほとんどの者はそのことに考え至りさえしないのだから。彼らはカメラの絶対的権能を信じて疑わず、あたかもそこに収められた画像や映像だけが世界のすべてであるかのようにふんぞり返っている。そしてそういう傲慢な人々が写真や映画を創っている。 本作の主人公であるトーマス(彼はカメラマンだ)は、物語を通じてカメラの権能を、ひいては自己の認識を疑い始める。 最終シーンでは陽気な若者たちの集団が彼の前に現れ、パントマイムのテニスを始める。ラケットもボールもない、視線と身振りだけのテニスだ。しかしそこには確かにテニスが存在していた。目には見えずとも、そこには振り抜かれるラケットがあり、打ち返されるボールがあった。 不可視のボールはフェンスを越え、トーマスの足元に転がってくる。彼はそれを拾い上げ、コートの中に投げ返した。 カメラの権能が、あるいは自己の認識が干渉できる領域など、ほんの少ししか存在しない。
会社の金で趣味の映画を
とって楽しんじゃいました。 という感じの映画だったと思います。それなりに雰囲気があって楽しめました。まあどっちか中等雰囲気を楽しむためだけの映画。もう10分ぐらい短ければもっといい映画だったような気もしますが人にはお勧めできませんねぇ。
フリオ・コルタサルを調べて、理解
1967年 イギリス/イタリア作品 アントニオーニ監督(脚本)が アルゼンチンのフリオ・コルタサルの短編小説「悪魔の涎」を元に 映画化 (この映画で 一躍、有名になった) 1960年代の 「スウィンギング ロンドン」と呼ばれる、ロンドンが世界のポップカルチャーの中心だった時代の雰囲気がわかる映画 (カメラマンは デビッド・ベイリーがモデル) カメラマンが 映像に プラスαを求めてしまう、という仕事柄、被写体から物語を紡ぎ出してしまった… という話 (物語への「欲望」に とらわれてしまった) 現実と非現実の 交差する映像になっている カメラワークは 見事 ちゃらけているようで、結構、 精力的に仕事をしているカメラマンを デビッド・ヘミングスが好演している (異世界に入っちゃいそう、でもある) 女優陣も サラ・マイルズ、ヴァネッサ・レッドグレイブ、ジェーン・バーキン(わからない!)と、豪華である モデル達も 当時、一世風靡した連中 ヤードバーズも登場し、ジェフ・ベックが 監督の希望で ギターを壊している (ベックとペイジの ツインリードは 貴重な映像らしい) 音楽は バービー・ハンコックが担当していて、展開に頭を捻りながらも 飽きさせはしない (色々、豪華である) 「女(ファッション写真)は飽きた、旅に出たい」 というのは、カメラマンの本音で、 だから こんなことに? 編集者らしき人物が それを受けて 「自由だと、彼のようにか?」 と 見せた写真の人物は、コルタサルだろうか 邦題が 意味深過ぎて、かえって誤解を招く (この監督の場合は 特に)原題どうりか それに近いものの方が よい
パントマイムのテニス
特筆すべきは"The Yardbirds"のライブシーンで不自然なくらいに客のノリが悪い!? ギターをぶっ壊すJ・ベックはまるで"The Who"のP・タウンゼントのように暴れている。 当時の"スウィンギング・ロンドン"を背景に物語やオチもあやふやに不自然な構成で進む展開に戸惑う。 白塗り集団が始まりと終わりに登場するがインパクトがデカい割に意味合いも謎のまま!?
サスペンスはただの見せかけ
偶然撮った写真に殺人現場が写り込んでいて…という面白そうなサスペンスと思って観たら、おもいっきり肩透かしを食らった 112分の上映時間だか、ヒッチコックならきっちり90分以下にまとめてもっと面白くしかも完結させる そう本作のサスペンスは尻切れトンボで終わってしまうのだ つまりアントニオーニ監督に取ってはサスペンスなぞ、どうでも良いのだ そんなのものを撮りたいのではない 本作で彼が撮りたかったのは1966年当時、世界的に注目され盛り上がったイギリスの若者文化のありさまなのだ だから当時の若者の憧れをこれでもかと見せびらかすのだ サスペンスには関係の無いシーンが延々と続く ベントレーのコンバーチブルを乗り回す 若い売れっ子カメラマン 車には無線がついており秘書に連絡しては対応させる 美人のモデルは選り取りみどり 華やかなファッションシーン ロンドン郊外のウインザー そこにRicky Tickというロック界では世界的に超有名ライヴハウスがあり、そこにわざわざ主人公を意味もなく行かせる 当時の特に通に人気のバンド、ヤードバーズの演奏シーンを長々と登場させる ジミーペイジ、ジェフベックという超人気ギタリストの演奏シーンだ そして、お屋敷での若者達のドラッグパーティー そんなのものはサスペンスには何の関係もない パントマイムのエアテニスは 単に前衛劇団を登場させたかったのかも知れない いや実は監督の種あかしかもしれない 映画はこれで終わるけど、サスペンスはエアテニスみたいなもんだ、気にするなということだ つまり当時のイギリスの若者文化に関心が無ければ、本作は観る意味がない ただ撮影は確かに美しい 写真スタジオのシーンの色彩感覚は良い しかしそれだけのことだ
人生って夢といっても間違いではないと思う
1966年イギリス・イタリア合作映画。112分。今年19本目の作品。いままでたくさんの映画を観たと高をくくっていたら、実はそうでないと思い知らしめてくれる作品に出会える。そして純粋に人生が楽しくなる。本作はまさしくそんな作品となりました。 内容は; 1、ロンドンの売れっ子カメラマンは偶然散歩していた公園で気になるカップルを見つけ、隠れながら写真を撮る。 2、しかし、女性が気づき、お金をだすから写真をネガごと譲ってくれと言ってくる。 3、男は女に嘘をついて偽のネガを渡し、現像すると思わぬ犯行が写真に収められていた。 本作は一言で表すならサスペンス。しかし、作品自体にあるパワーはサスペンスを超えてシューリアルなものがあります。本作をわたくしは夜中の2時ころに観だしたのですが、眠気もふっとび一気に引き込まれました。 キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」が好きな人なら本作は絶対に好きになれます。本作のサスペンスは、誰が犯人とか以前にわたくしたち人間の認識能力自体を見事に不安につるし上げています。 そこに作品全体のモチーフとなるカメラという媒体がすごく活きていて、二重にも三重にもテーマが活きています。この調和感がほんとに素晴らしく、観終わったあとの心の浮遊感は本物のアートを観た気分。 ミケランジェロ・アントニオーニ、すごい監督さんがいたものです。今まで知らなかったことが恥ずかしくなるくらい素晴らしい作品でした。 ちなみに原題は「Blow Up」で、業界用語で「現像」を意味するのだとか。それを知ると邦題はもっと工夫してほしかった。この題名だと、観たい人が限られると思いますから。 本作のふわふわ感を体験した次の日から日常が違った視点で見えました。 すごい映画です。
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