U・ボートのレビュー・感想・評価
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音とカメラワークの演出が素晴らしい
戦争映画なのに敵の姿があまり描かれず、むしろそれが見えないことによるストレスや恐怖を描いている。特に、敵艦のスクリューとソナーの音が近づき、次に爆雷の爆発音と衝撃が伝わるとき、水中に隠れた潜水艦がいつでも一方的に洋上の艦船を視認できるわけではない厳しさが伝わってくる。
そして、深海へ潜行していくときに水圧で船体が軋む音、水圧に耐えきれずにはじけ飛ぶボルトの音は、観ている者も胸や頭を押さえつけられるような気になる。
潜水艦の内部構造は単純で、筒状の船室が前後に広がっているだけである。その一本の細長い空洞の中で、乗組員たちはそれぞれの持ち場で任務にあたるから、自然と彼らの動きは一本の線上に留まる。例外はというと、艦長ら限られたクルーが艦橋に上がることくらい。
映画においてはこの狭い内部での出来事が大部分を占める。このように被写体とカメラの動きにバリエーションがつけにくい場がスクリーンに長々と映し出されるにもかかわらず、観る者を飽きさせないどころか、どんどんスクリーンで起きていることに惹き込まれる。撮影における不利な条件を全く感じさせないフィルムである。
潜水艦が全然活躍しない
結局、主役たる潜水艦がやっつけた敵はタンカーなどしょぼい船ばかりで、敵の潜水艦はそもそも出ないし、駆逐艦からは逃げ回るだけで精一杯という非常に辛気臭い話だった。潜水艦の中の過酷な状況はとてもよく描かれていた。しかし修理の様子などは言葉による連絡だけであまり作業風景が描かれておらず、もっと絵で見たい場面がたくさんあった。潜水艦の外観もあまりみれず不満だった。
最高傑作 究極の人間劇
総合:100点
ストーリー: 100
キャスト: 100
演出: 100
ビジュアル:100
音楽: 85
これは単なる戦争映画というよりも、究極の人間劇。原作はノンフィクションではないが、実際に戦時下のUボートに乗りこんだ士官が彼の経験や調査を基に書かれた、生々しいほどに現実感のあるもの。
戦争という生死のやりとりをする極限状態の中、人知を尽くした戦いの結果として戦果を上げて歓喜するることがあれば、逆に敵からの奇襲攻撃も受けることもある。「シャッシャッシャッシャッ」と敵駆逐艦のスクリューが水を掻き分ける音が近づき、それは死への恐怖を乗員に運んで来る音でもある。駆逐艦の通過時に上から爆雷の投下音が聞こえ、続いてやってくる爆発によって船体はきしみ、耐え切れなくなったバルブが吹き飛び浸水が発生し、経験豊富な船員ですら恐怖で錯乱する。そうかと思えば広い嵐の大西洋上で偶然戦友と邂逅することもあり、それだけで明日をも知れぬ孤独な旅をする潜水艦乗りの心が沸き立つ。
そんな中で帰還を前に受けた命令は、非常に困難で生き残れる可能性が低いもの。そして実際予想通り大きな損害を受けて艦は沈み続け、このままでは水圧による破壊が迫る。沈降するたびに水圧に耐え切れなくなった部品がはじけ飛びさらに新たな浸水が始まり、死が迫っていることをいやでも乗員に教える。あらゆる手段を講じ"浮かべーーーっ"と叫んでも止まることなく沈み続ける艦。奇跡的に圧壊寸前に海底の台地のようなところに引っかかりかろうじて生き残るが、艦はあちこちが壊れ浸水し、機関は動かず酸素も電池も残り少ない。まさに船体の壁一枚向こうに待っているのは、数時間後に迫る死。
乗組員は絶望的状況の中、針の穴を通すようなかすかな可能性に賭けて修理と再浮上を試みる。それほどにまで数々の試練を乗り越え生き残りを目指した彼らにやってくる結末は、戦争の虚しさと現実の厳しさを残酷すぎるほどにまで容赦なく突きつける。
素晴らしい大傑作。私の中で最高の映画作品。俳優陣は日本ではまったく無名だが、勇気と恐怖と生への執着といった真に迫る演技を見せてくれるのもいい。いったいどうやって撮影したのかと思うほどの嵐の中を進む潜水艦や燃える油槽船の本物のような迫力もすごいし、実物大の艦を制作して撮影され、艦の内部の再現も偽物とは思えないほどの徹底した作り込みで、基地に至っては当時のものがそのまま現存しているものを使ったという正真正銘の本物。物語といい出演者の演技といい映像といい、全てが極めて高い品質を持って見事に合致している。この作品で監督のピーターゼンは世界に認められ、ハリウッド進出を果たした。
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