「音とカメラワークの演出が素晴らしい」U・ボート よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
音とカメラワークの演出が素晴らしい
戦争映画なのに敵の姿があまり描かれず、むしろそれが見えないことによるストレスや恐怖を描いている。特に、敵艦のスクリューとソナーの音が近づき、次に爆雷の爆発音と衝撃が伝わるとき、水中に隠れた潜水艦がいつでも一方的に洋上の艦船を視認できるわけではない厳しさが伝わってくる。
そして、深海へ潜行していくときに水圧で船体が軋む音、水圧に耐えきれずにはじけ飛ぶボルトの音は、観ている者も胸や頭を押さえつけられるような気になる。
潜水艦の内部構造は単純で、筒状の船室が前後に広がっているだけである。その一本の細長い空洞の中で、乗組員たちはそれぞれの持ち場で任務にあたるから、自然と彼らの動きは一本の線上に留まる。例外はというと、艦長ら限られたクルーが艦橋に上がることくらい。
映画においてはこの狭い内部での出来事が大部分を占める。このように被写体とカメラの動きにバリエーションがつけにくい場がスクリーンに長々と映し出されるにもかかわらず、観る者を飽きさせないどころか、どんどんスクリーンで起きていることに惹き込まれる。撮影における不利な条件を全く感じさせないフィルムである。
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