夕なぎのレビュー・感想・評価
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フランスの三角関係
ソーテ監督の「とまどい」「すぎ去りし日の…」が好みだったので
これも観てみた
上記ふたつは〈揺れる男心〉を描いていて判りやすかったが
この映画の主人公セザール(モンタン)は揺れるというより
混乱、嫉妬、激怒した挙げ句
あさっての方向に走ってしまうフランスの中年男で
かえって女をライバルの方に押しやっているようにも思えた
(しかし女も混乱する)
恋愛関係にあっても相手を全部掌握出来ないし
わかり合えない部分もある
そこにライバルが存在することは不安になるし
やり手でもある男の苛立ちは激しくつのる
(しかもライバルは若く、知的なのだ)
女が去って 失意も癒され〈夕なぎ〉のような無風状態を迎え
穏やかな日々を過ごすようになるが
女が再来する…ドキッ
みたいな物語だろうか
モンタンはピアフに育てられた男であることは
周知されているので
男は女によって鍛え上げられる…という連想も
されるだろうか?
(そしてやっぱり 味わい深い男になっている…)
こういうのが〈イイ男〉〈イイ女〉を生み出すと
考えられているのかもしれないが
結構きつそう
そしてフランスは〈恋愛体質の国〉ということだろうか
セザールは成長したかな
ホモソーシャルから疎外されるロザリー
魅力的な女性であるロザリーをめぐって、2人の男が彼女を取り合う、というおはなし、だったはずなのに、2人の男のあいだに友情のようなものが生まれていく。
お金を稼ぐ能力があって、みんなを笑わせたりすることに長けているおじいちゃん、と言ってもいい年齢の男と、ロザリーと同年代の、芸術的才能のある男。前者は嫉妬深くて、ロザリーに執着するような男で、後者は、静かに見守るようにロザリーを愛するような男、男たちは正反対な性質を備えているように見える、
あんなにばちばちにロザリーを取り合っていたのに、いつのまにか、男2人の距離が近くなり、やがて、ロザリーを置き去りにして、ふたりで魚釣りに行ったりするようになる。ホモソーシャル的な関係性を築いていき、いつしか、ロザリーが疎外されていく。
疎外されたロザリーは、2人の前から姿を消す。
男たちふたりは愛する人を失ったという傷を共有して、ロザリーが消えてから2年後、ふたりで暮らそうなどと言い出す。そんなときに、ロザリーが2人の元に帰ってくる。ロザリーがにっこり笑って門を開けたところで映画は終わる。
ロザリーは、これから、男2人とともに暮らすつもりなのだろうか、なぜ戻ってきたのだろうか。ホモソーシャルに女が疎外されていく状況も、なんだかむむむと思ったけれど、戻ってきて、ふたりのうちどちらかを選ぶつもりもなさそうなところに、なんだか、哀しくなったしまった。ハッピーエンドな結末のように描かれていたけれど、わたしにとってはグロテスクに思えた。女は、疎外されて、2人を選ぶこともせず、最後はにっこり笑ってすべてを許さなければならない、のだろうか、
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