劇場公開日 1952年5月15日

「傑作の82年カーペンター版より、ちょっとイビツなこちらの方が好き。」遊星よりの物体X ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0傑作の82年カーペンター版より、ちょっとイビツなこちらの方が好き。

2020年12月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

クリスチャン・ナイビー監督作品となっているが、どう見てもハワード・ホークスの映画になっているのが判る古典SF恐怖映画。

傑作の82年カーペンター版より色々なところが古くて当時は技術的に妥協している部分などで映像リテラシーのいる映画だが、めげない男たちの快活で陽気な振舞いや理知的な女性の姿が良い。

個人的に見どころは、宇宙人の円盤が、氷の下に閉じ込められている低予算ゆえに視覚化の難しい場面で、円盤の形を確かめる為に皆で縁に立って円盤の形が判る斜俯瞰から見た場面などは、ビジュアル的に分かりやすく見栄えする映像表現などがあり低予算でも知恵を使う事を教えてくれる。

ネタバレあり

ドア開けたら怪物が襲いかかってくるなどのショック描写もあり、放射線測定器をレーダー代わりに索敵して戦う準備する対決前のサスペンスありと演出も好調。

特に、灯油を怪物にかけて火を放つ場面は、凄まじい炎の火達磨スタントと相まって迫力があり、当時の撮影もかなり危険だったと想像出来る。

新聞記者が、発信するラストメッセージは、多く映画研究者の指摘する当時のソ連共産主義への警告を示しているのもその時代の空気なども含めて色々と考えさせられる。

ただ、根本のストーリーで、問題が有るとすると、宇宙人は、特に悪行してないので、地球人に一方的に悪と決め付けられて、追われるのは、どう見てもアンバランス。

映画評論家の町山智浩氏も指摘している通り、殆ど悪い事をしていない宇宙人を、地球人がボコる展開に、共産主義の恐怖と警戒を訴えているのだが、相手への理解や折合いなどせずに、叩こうとするヒステリックな姿勢は、赤狩りを連想させる。
その部分を取ると西部劇的対立構造や閉鎖空間での闘いなどが浮上してまさに『リオ・ブラボー』などの後年の傑作をを連想させる。

そういえば、1982年に『遊星からの物体X』(傑作)を監督したジョン・カーペンターが、1976年に撮ったアクションスリラー『要塞警察』(これも傑作)はホークスの『リオ・ブラボー』の現代版リメイクな作品で、比較するのも面白い。

本作は1951年制作なので、当然CGなども無い時代で特殊効果がショボく感じるのだが、上記にある、ちょっとしたビジュアルへの気配りやリドリー・スコット監督の『エイリアン』のように対象をあまり見せない演出などは中々。

あとカーペンター版よりユーモアもあるのは、作家の資質違いもあるけど、個人的にはこちらがいい。

最初はビデオテープ時代に鑑賞して、名画座などでも再見しているが、今回鑑賞したテレビ放送時の日本語吹き替え版入りのDVDソフトは、とても画質が良好で新鮮な気持ちで見れた。

ミラーズ