「内容の濃い作品」さらばアフリカ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
内容の濃い作品
グァルティエロ・ヤコペッティ監督のリバイバル上映作品である。アフリカのロケでカメラが捉えた現実が容赦のない映像で紹介される。これは本当に事実なのかと疑いながらの鑑賞となったが、銃殺やアラブ人の大虐殺の映像は、所謂アクション映画で登場するような派手なシーンとは正反対にとても地味な映像であり、おかげで真実味が増していた。
ヨーロッパが手を引いたあとのアフリカはまさにカオス状態だった。部族間の戦いは、初期は手製の武器を使っていたから、生々しいことこの上ない。手製の槍で動物を殺してきたのと同じように人間を殺す。残酷さが尋常ではない。
映像では殆ど映されないが、アフリカの残酷な現実の背景に浮かび上がるのはヨーロッパの商人の姿である。アフリカ人が象を狩って象牙を集めるのはそれが高く売れるからだ。買うのはヨーロッパの商人である。アフリカ人がアラブ人を集めて銃で処刑する。その銃を売るのはヨーロッパの武器商人である。
イギリスもフランスもアフリカを支配するのを諦め、アフリカを市場とし、資源の供給地とした。ヨーロッパ人が残った南アフリカ共和国では人種差別が続いているが、ヨーロッパ人が去った地域では土地と資源の支配をめぐって現在に至っても争いが絶えない。
本作品の撮影時点のアフリカは、土着信仰の未開の地であり、部族内では長老を頂点とするヒエラルキーがあり、食物摂取の優先順位がある。金やダイヤモンド、象牙などの資源の地であるほかに、サバンナはサファリ観光の地でもある。
かつての暗黒大陸は、急速に発展している地域と文明に取り残された地域がある。発展する地域では森林破壊が起きて地球温暖化の一員となっているが、先進国は森林破壊をして都市を築いた。アフリカだけが温暖化の責任を問われることはないという主張は一理ある。
鑑賞中に頭をフル回転させても追いつかないほど内容の濃い作品だったと思う。