モロッコ慕情のレビュー・感想・評価
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モロッコ慕情
「カサブランカ ('43)」と同じフランス領モロッコを舞台にした映画だと思っていたら、実はシリアのダマスカスが舞台であって、邦題のモロッコとは何の関係もなく!因みに原題はSiroccoで、北アフリカのサハラ砂漠から北方の地中海や欧州に向けて吹く季節風のこと。恐らくIP(インターナショナル・プロモーション)配給による劇場公開時に、社長の水野先生(映画評論家 水野晴郎氏)が付けちゃったんだろうなあと思いました。
ハンフリー・ボガートがいつもの如くシニカルで、フランス側につくでもシリア側につくでもなく、中立な立場を装いながら、現地でしたたかに商売をやっている男ハリーを好演しています。そこに一目惚れした女性ビオレ(マルタ・トラン)が現れ、更にその愛人がフランス側のフェロー大佐(リー・J・コッブ)であることが分かり、「カサブランカ」に似たシチュエーションになります。但し、「カサブランカ」のような一度観たら忘れられないような映画的な名シーンは皆無で、全編が同じような薄暗い迷宮のような街中のシーンで進行し、映画的な躍動感、メリハリに乏しいのが難点。それでも退屈はせずに普通に観られたのは、前記、主役級の俳優たちの名演に加えて、脇役陣もなかなか良かったことか?オーソン・ウェルズのマーキュリー劇団の名優エヴェレット・スローン(「市民ケーン ('41)」、「恐怖への旅 ('43)」、「上海から来た女 ('47)」「底抜け00の男 ('64)」、「底ぬけいいカモ ('64)」)、ゼロ・モステル(「ローマで起こった奇妙な出来事 ('66)」、「プロデューサーズ ('67)」「空かける強盗団 ('69)」)、そして「引き裂かれたカーテン ('66)」のリント教授ことルドウィッヒ・ドナスも出て来ます。監督のカーティス・バーンハートは、ボギーとはフィルム・ノワールの佳作「追求 ('45)」で既に組んでおり、ノワール系ドラマを中心に、音楽映画やコメディまでこなす職人監督でしたが、同じくどんなジャンルでも器用にこなした名職人監督だった「カサブランカ」のマイケル・カーティスと比べてしまうと、技量やスケール感がかなり劣ることは否めません。
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