劇場公開日 1995年10月28日

「【”事故は不幸な女の友達。生き残るためには悪女になる事も大切、と女主人はメイドに言った。”今作は愚かしき夫に対する強烈な妻の罰と、娘への深い愛情を描いたヒューマンサスペンスの逸品なのである。】」黙秘 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”事故は不幸な女の友達。生き残るためには悪女になる事も大切、と女主人はメイドに言った。”今作は愚かしき夫に対する強烈な妻の罰と、娘への深い愛情を描いたヒューマンサスペンスの逸品なのである。】

2025年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

難しい

■アメリカの小さな島が舞台。
 郵便配達人が富豪未亡人ヴェラ邸で見たものは、螺旋階段から転げ落ちた血だらけで横たわる女主人ヴェラ(ジュディ・パーフィット)の横で、のし棒を手に立ち尽くす家政婦・ドロレス・クレイボーン(キャシー・ベイツ)の姿だった。
 無実を主張しながらも黙秘を続けるドロレスは、事件を知り帰郷した事件記者である娘・セリーナ(ジェニファー・ジェイソン・リー)にも何も語らない。
 だが、セリーナにも愚かしく忌まわしき、酒に溺れる父との苦い思い出が有ったのである。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・キャシー・ベイツと言えば「ミザリー」のスティーブン・キングとしか思えない作家を捉え狂気の演技を思い出すし、彼女の傑作だと思っている。
 勿論、脇役でも多数の逸品で活躍をされている方だが、この作品は知らなかった。今作でのキャシー・ベイツの演技は「ミザリー」を越える部分があるのではないかと思った程の作品だと思う。

・20年に亘る母娘の秘密と、母が抱えていた娘の成長を願う想いが、重厚且つミステリアスに描かれて行くストーリーテリングの妙は、流石スティーブン・キング小説「ドロレス・クレイボーン」を底本にしているだけの事はあるが、ドロレス・クレイボーンを演じるキャシー・ベイツの、幾つかのシーンでの鬼気迫る表情や、幾つかのシーンでの必死の形相が物凄いのである。

■富豪未亡人ヴェラと夫の関係は、一夏の風景でしか描かれないが、裕福であると言うだけで、ドロレス・クレイボーンと酒浸りの夫との関係性と同じで、既に破綻している事が良く見ていれば分かる。
 故に、ヴェラが自分に尽くすドロレス・クレイボーンに対して言った、”事故は不幸な女の友達。生き残るためには悪女になる事も大切。”という恐ろしい言葉がこの作品の鍵であり、ドロレス・クレイボーンが、富豪未亡人ヴェラが螺旋階段から転げ落ち、死んだ際にも黙秘を続けた理由であり、且つヴェラが自分に尽くすドロレス・クレイボーンに160万ドルという巨額の遺産を残していた事に、彼女が驚愕するシーンにも繋がるのである。

<今作はミステリータッチで、20年前の”或る出来事”と、20年後のドロレス・クレイボーンがずっと家政婦をして来た富豪未亡人ヴェラの不可解な死を軸に描かれるが、その根底には母親であるドロレス・クレイボーンの娘セリーナに対する深い愛情があるのである。

 そして、私は思ったのであるが、これは犯罪を誘発していると思われると困るのであるが、自分の恋人や夫、父親から虐待を受けながらじっと耐えている女性がいるのであれば、この作品を観るべきではないかと思ったのである。

 女性は男性からの暴力(含む性暴力)に耐えていてはイケナイのである。現在では、そのような女性を護る組織は多数有る。勇気を出して、そのような組織に申し出る勇気を与える作品だと思ったのである。

 それにしても、20年前の”或る出来事”が起きた時に、皆既日食になるシーンは見事な演出だと思う。太陽も、愚かしき男に起きた”或る出来事”を見て見ぬふりをしているとしか見えなかったからである。

 今作は愚かしき夫、父に対する強烈な妻と娘からの罰を描いたサスペンスの逸品なのである。>

NOBU
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