劇場公開日 1991年2月8日

「軍事工場ピンポイント爆撃の描写はその後の無差別爆撃への懺悔と信じたい…」メンフィス・ベル KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0軍事工場ピンポイント爆撃の描写はその後の無差別爆撃への懺悔と信じたい…

2023年1月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この手の群像劇で
私にとっていつも問題になるのが、
冒頭で懇切丁寧に
説明されているにも係わらず、
各登場人物の区別に苦労してしまうことだ。
それがクリアー出来ていれば、
より楽しめたのではないかとの思いが
今回も頭を擡げた。

しかし、そんなことを割り引いたとしても
良く出来た作品に思えた。

潜水艦ものでは、結果的に艦の構造を詳細に
説明したかのような映画は数多くあるが、
この作品のように、
爆撃機の見事な飛行シーンの映像と共に、
爆撃機の構造やその運用のシステムを
事細かく描いた映画は
殆ど無かったのではないだろうか。
戦闘の各場面に対応して、
パラシュートや安全索の装着や
防弾ジャケットを身に付ける
リアリティ感には感服するばかりだった。

そして、この作品では何人かの
軍人による戦争感が描かれた。

宣伝大佐は、
明日をも知れぬ命への想いに浸る隊員に
寄り添えない人物として描かれ、
彼が遺族の手紙を読まされる場面での
実写フィルムの挿入が
戦争の悲惨さを一番伝えていたようで
見事だったものの、
彼がそれらの手紙でどう改心したのかが
ラストで上手く表現できていなかったのは
残念だった。

一方で、メンフィス・ベル機長の
民間人を犠牲にすまいとの
軍事工場ピンポイント爆撃への強い意志も
強調して描かれた。

しかし、我々はその後の
連合軍によるドレスデン等の
破壊的都市爆撃を知っている。

そして、日本中の都市無差別爆撃や、それが
ヒロシマ・ナガサキに繋がっていくことも。

むしろ、
そんな歴史を踏まえた懺悔と言うか、
戦争という悲惨さな状況の中で、
せめてこう在りたかったとの
製作者側の想いの表れの描写と信じたい。

KENZO一級建築士事務所