「全体に緩い」ムトゥ 踊るマハラジャ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
全体に緩い
総合:50点 ( ストーリー:50点|キャスト:60点|演出:50点|ビジュアル:70点|音楽:70点 )
日本で初めて有名になったインド映画ということで公開当時随分と話題になったし、主題曲は「汗と涙 なぎらも泣く」でなぎら健壱本人登場で空耳アワーにもなったし、昔から知っていた作品ではある。制作から29年目にしてようやく初の鑑賞となった。
緩い、とにかく緩い。物語も緩いし、演技も緩いし、編集も緩いし、香港映画の影響そのままの格闘も緩い。動員数も多い3時間近いかなりの大作だが、この時代のインド映画はこのような緩い映画が人気だったのだろうか。緩いのだがそうかといって笑えるほどでもない。くだらない無駄な場面も多くて間延びしがちな薄味なので、時間ばかり長くて退屈気味だった。たくさんの音楽と踊りがあるのがインド映画の特徴だそうだが、音楽劇がそもそも好きでもないのでたいしてはまらず。
それでいて後半途中から急に雰囲気が変わって緊迫した話になり演技も変わる。今までの緩い2時間くらいの時間は何だったのかと置いてきぼりにされる。その割には犯罪行為もなかったことになり、こんな結末でいいのかなとすっきりしない。
大量動員した馬車の場面など面白い部分もあるが、全体としては時間を持て余し気味だったし、自分の趣味ではない。現在のインド映画でもこのような作品が多いのかどうかわからないが、この当時の映画はこんな作品が多かったのかと想像する。
インド人の友人が自分の村には車なんて走っていなくて馬車ばかりだったと言っていたが、この作品でも自動車は殆ど登場しない。2023年にはインドは中国・米国に次ぐ世界第三位の自動車市場になったが、1990年代はまだまだ自動車は少なかったのだろう。
インドは数百の言語と民族がいてちょっと遠くに行くともう言葉が通じないとも聞くが、そのような場面があった。また暴力行為(特に女性に対する)も多いと聞くが、そのようなことも作品に反映されているのかなと思った。映画は真実ではなくてもインドの社会情勢が作品に取り込まれているのだろうかという意味で、自分には興味深かった。