「ぎりぎりの綱渡りの交渉」身代金 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
ぎりぎりの綱渡りの交渉
総合:85点
ストーリー: 85
キャスト: 80
演出: 85
ビジュアル: 70
音楽: 65
誘拐された息子が普通のやり方で帰ってくる保証は無い。実際、犯人逮捕の手がかりとなる情報を持っている人質の解放は犯人にとっても危険で、身代金を払っても人質が帰ってこない事件はいくらでもある。
交渉を通してわかったのは、計画をたてた犯人は感情的になるチンピラというより、なかなか冷静で有能そう。恨みによる犯行というよりは、金が目的。そんな相手への分析に対してのメル・ギブソンの行動は大きな賭けではある。それが裏目に出て最悪の事態になる可能性は充分にある。本人にとっても厳しい選択であるのは間違いない。でも子供の生存すら確認できない状態で犯人主導のまま彼らのいいなりになって交渉を続けたからといって、それがうまくいくという保証もまたないのだ。
それでもギブソンは受身一辺倒から戦術を変えることにより、立場を強くして子供の声を電話越しに聞き子供の生存確認に成功した。ギブソン同様に犯人もまた計画通りにことが進まなくなって追い詰められている。そんなことを交渉を通して感じながら、お互いに神経をすり減らしながらぎりぎりの綱渡りをしていく交渉の過程が緊迫感があって楽しめた。
子供が誘拐されて助けたいと思う親は、取り乱すだけとは限らない。プロの交渉人は相手の言うことを黙って聞いていいなりになるだけの交渉はしない。ギブソンのやり方は一人の父親というよりはまるでプロの交渉人と言えるほどの高い技術と戦術だった。ちょっとうますぎかなとも思うが、ビジネスで大成功した人の設定だからそれまでも数知れないきわどい交渉をやってきたはず。先の見えない交渉をする作品として映画史に残るかなりの面白さ。場面が変わった後半にも交渉があります。そしてこの一歩踏み外すと終わりという駆け引きが凄かったので、いい映画だと思います。