「映画的娯楽と現実の扉を開く、人体の旅」ミクロの決死圏 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
映画的娯楽と現実の扉を開く、人体の旅
ミクロ化や体内の冒険は特撮やアニメでもお馴染み。
『ウルトラセブン』の名作エピソード「悪魔の住む花」や『ガメラ対大魔獣ジャイガー』、『ドラえもん』にもそんな話があった。故・川北紘一特技監督は人間がゴジラの体内に入るという案を考えていたともいう。
本作は、その先駆け。
競争激化するミクロ化計画。
そのキーマンである博士が命を狙われ、脳死状態に。
博士の命を救うには、縮小して体内から治療するしか術がない。
が、ミクロ化の限度は1時間…!
もし本当にミクロ化が実現した場合、医療の現場に導入されるかどうかは疑問である。リスクが大き過ぎる。
これは映画だからこその面白さ!
博士の亡命と暗殺。まるでスパイ映画のようなOP。
ミクロ化実施。設定やメカニックはSF要素充分。
未知なる体内へ。リアルさより原題通り、イマジネーション溢れるファンタスティックな世界。
人体はよく出来ている。異物を排しようと襲い来るスリル。
チームの中に裏切り者が…。疑心暗鬼の密室サスペンス。
治療を成功させ、果たして無事に脱出出来るのか…? タイムリミット・ミッション!
ワクワクハラハラ、娯楽映画の醍醐味がたっぷり詰め込まれている。
確かにリアリティーには欠ける。
一体どういう原理でミクロ化出来るのか説明らしい説明はナシ。
その序盤のドラマ部分はかなりお粗末で、早々と本題へ。
『2001年宇宙の旅』でSF映画が“格上げ”される2年前、全体的にB級チックでもある。
でも、特撮は良く出来ている。
挺の窓から外の光景がどんどん大きくなっていく縮小の描写はユニークだし、何より人体内。
今ならCGと科学的アドバイザーでリアリティーあるだろうが、ビニールやプラスチックなど小道具で再現した人体内の美術や造形は、これぞ特撮!
リアリティーに欠けると言ったものの、劇中登場するレーザー銃などは類似したものが実際発明されてるし、未知なる世界への挑戦やその世界への激化競争は当時の宇宙計画を彷彿させる。
圧倒的なリアルさにも感嘆させられるが、やはりSFはアイデア、イマジネーション!
夢とロマンがあり、時には現実の扉をも開く。
色んな意味で、名作SF!
果たして現実世界で、ミクロ化が可能になる日はやって来るのだろうか…!?